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[プレスリリース]「影のない画像」でアミロイドーシスを鮮明に診断! 〜新技術で複屈折を定量化、従来法を超える画像を実現〜

 埼玉医科大学の若山俊隆教授、横内峻院生、茅野秀一教授と宇都宮大学の東口武史教授らは、共同でアミロイドーシスの病理診断をより鮮明にする、影のない新しい画像処理技術で定量観察を実現しました。
 アミロイドーシスは、線維状の異常たんぱく質が全身または臓器に沈着して発症する疾患で心臓や腎臓のアミロイドーシスが知られています。さらに、脳にアミロイドβと呼ばれるタンパク質が蓄積するアルツハイマー型認知症もアミロイドが関与する病気です。これらの疾患には、早期かつ正確な診断が求められています。
 約50年の間、Congo Red染色を用いた病理標本を偏光顕微鏡下で観察し、「アップルグリーンの複屈折(注1)」と呼ばれる色彩の観察が"ゴールデンスタンダード"とされてきました。しかし、臨床現場ではオレンジや赤などの色彩が観察され、「アップルグリーン」という基準が疑問視されました。
 2024年の国際アミロイドーシス学会の声明で、診断基準は「特徴的複屈折の観察」と改訂されましたが、複屈折顕微鏡を臨床現場に設置することは容易ではありません。また、従来の偏光観察も「偏光シャドウ」と呼ばれる影が、アミロイド沈着の詳細を観察する際に問題となっていました。
 本研究では、従来の生物顕微鏡に偏光素子を追加し、回転角を変えて撮影した複数画像を解析する画像処理法を開発しました。従来の複屈折分布と95%以上の相関を有し、従来の目視診断よりも高精度で定量的な観察を実現しました。この技術は、現行の病理診断環境に簡便に導入できるため、全国の病理検査室への普及も期待されます。

この成果は2025年8月号のScientific Reports誌に掲載されました。


■用語解説
(注1)複屈折:光が物質を透過するとき、進む速さが方向によって変わることがあります。これは、光が進む向きによって屈折率が異なるために起こる現象で、「複屈折」と呼ばれています。


研究の概要

本研究の概要


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プレスリリース

【お問い合わせ】
宇都宮大学 工学部 基盤工学科
東口 武史 教授
TEL: 028-689-6087
E-MAIL: higashi※cc.utsunomiya-u.ac.jp
(※を半角@に変更してください。)

【関連リンク】
研究者総覧 東口武史 教授
宇都宮大学 工学部 基盤工学科