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[プレスリリース]植物細胞が過酷な光環境に即時応答するしくみの一端を解明!光環境の変化に応じて"個"から"集団"の対応に切り換わる光受容タンパク質
大地に根を張り移動しない植物は、光合成効率を最適化するため、光強度や温度に応じて葉緑体の配置を変化させます。常温弱光下では葉緑体を光照射面に集める「集合反応」を、低温や強光下では光合成の機能低下を避けるために葉緑体を逃がす「寒冷逃避反応」や「強光逃避反応」が誘導され、これらの反応は、光や温度のセンサーとして働くキナーゼタンパク質フォトトロピン(phot)によって制御されています。photは青色光を受けると自己リン酸化(自身にリン酸基を付加する反応)し、そのレベルは低温や強光で上昇しますが、その制御機構は十分に解明されていませんでした。
この度、宇都宮大学大学院地域創生科学研究科博士後期課程3年の野口穂さんとバイオサイエンス教育研究センターの児玉豊教授らの研究グループは、名古屋大学大学院理学研究科の松林嘉克教授および野田沙希技術補佐員と共同で、植物の青色光受容体*photが、光と温度に応じて2つの自己リン酸化様式を切り換え、植物にとって過酷な環境に対して迅速に応答する仕組みを解明しました。
研究グループは、photが1分子内で完結する「シス自己リン酸化」と、分子間相互作用を介する「トランス自己リン酸化」の2つの自己リン酸化様式を持ち、常温弱光下ではシス自己リン酸化のみが誘導される一方、強光下や低温下ではシス自己リン酸化とトランス自己リン酸化の両方が誘導されることを明らかにしました。この自己リン酸化様式の切り換えにより、植物にとって過酷な低温や強光の環境下では、photが周囲のphotと相互に自己リン酸化を行うことでリン酸化レベルを上昇させ、逃避反応を迅速に誘導して環境変化に適応することが示唆されました。
本成果は2024年12月3日付で英国科学誌The Plant Journalに掲載されました。
* 青色光受容体:青色光(太陽光や蛍光灯の光などに含まれ、波長が450nm前後)を受け取るタンパク質。植物はphotを含む複数の青色光受容体によって光の波長(色)、強さ、方向などを感知する。
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