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[プレスリリース]無害な銀めっきプロセスの開発に成功~有害なシアンを使わない銀めっきが可能に~

<発表のポイント>
■宇都宮大学工学研究科システム創成工学専攻博士後期課程Atiqah Binti Jasniと工学部吉原佐知雄准教授らは、2,4-ピリミジンジオン (ウラシル) または 5-メチルウラシル (チミン) を 5,5-ジメチルヒダントイン (DMH) ベースの錯体をシアン化物を含まない銀電気めっき溶液に添加すると、銅基板上に半光沢銀膜をめっきすることができ、高い電流効率値を実現することに成功しました。
■ウラシルベースまたはチミンベースの溶液と比較して、EISで銀めっき溶液の溶液抵抗であるRsolの値が大きいことを見出し、陰極電位掃引中の水素発生電位までの銀析出量がDMHベースの溶液からより少ないことを発見しました。
■この研究では、電気化学的水晶微量天秤 (EQCM) と電気化学的インピーダンス分光法 (EIS) を使用し、ピリミジン誘導体 (2,4-ピリミジンジオン (ウラシル) および 5-メチルウラシル (チミン)) およびヒダントイン誘導体 (5,5-ジメチルヒダントイン (DMH)) をキレート剤とし、添加剤としてポリエチレンイミンを用いシアン化物を含まない銀電気めっき溶液の開発に成功しました。

<発表概要>
 シアンフリー銀めっきプロセスの開発としてシアン銀めっき溶液と同等な性能を得るために、シアンフリーの水溶液に錯化剤や添加剤が与える影響に関して検討を行っている。シアンフリー銀めっき溶液中の銀イオンを水溶液中で安定化させるために錯化剤としてチミンを用いた時にめっき反応に与える影響とそのメカニズムを明らかにすることを本研究の目的とし、研究を進めている。シアンフリー銀めっき溶液の錯化剤としてチミンを用いた際に、すでに報告のあるシアン、ウラシルや5,5-ジメチルヒダントイン (DMH)と比較して、その析出した銀めっき皮膜の特性および析出過程に与える効果を明らかにしている。錯化剤による銀めっきに及ぼす影響を検討した結果、特にチミンの場合、シアン銀めっきの無光沢皮膜と比べて、より微細な結晶構造を持つ半光沢銀めっき皮膜が得られることが特徴である。皮膜の硬さについても、錯化剤としてチミンを用いた場合はDMHも同様に、シアン銀めっき皮膜と同等な皮膜硬度の値が得られたことを見いだしている。 さらに、各シアンフリー銀めっき溶液の添加剤としてポリエチレンイミンを用いた時に析出した皮膜の特性およびその析出過程に与える影響を明らかにしている。シアンフリー銀めっき溶液に平均分子量1,800のポリエチレンイミンを添加すると、チミン及びウラシル浴の場合、光沢皮膜が得られることを見いだしている。
 本研究成果は、2023年9月19日、学術誌「Journal of The Electrochemical Society」に掲載されました(オンライン版で公開されました)。


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【お問い合わせ】
国立大学法人 宇都宮大学 学術院
准教授 吉原 佐知雄
TEL:028-689-6150
E-mail:sachioy※cc.utsunomiya-u.ac.jp
(※を半角@に変更してください。)

【関連リンク】
研究者総覧 吉原佐知雄 准教授
工学部