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[プレスリリース]光による量子もつれ状態の生成過程が明らかに ~物性制御の新手法に向けた新しい理論~

 【発表のポイント】
・離れた物質間に光照射によって量子もつれ状態が形成される機構を、理論的に解明した。
・光を量子力学的に取り扱うことが、この過程に理解には必須である。
・光による物性制御の手法や新物質の研究・量子メモリの実現への展開が期待される。

■研究概要
 宇都宮大学工学部・石田邦夫教授は、東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻・松枝宏明教授と共同で、光を利用した量子もつれ状態の生成に関する新しい理論を見出しました。
 近年になって量子コンピュータ・量子暗号といった量子情報科学の研究が進むとともに、量子もつれ状態の果たす役割に注目が集まっています。また、量子もつれ状態は物質中に自然に存在しており、物質の状態を決める重要な要素であることがわかってきました。物質が示す多彩な性質(物性)を制御する際には、こうした量子もつれ状態が光などの外部からの刺激によってどのように変化するかが鍵となります。
 物質中に普通に存在する量子もつれ状態も、十分離れたところにある物質の間には存在しないと考えられています。しかし、これらに対してフェムト秒レーザーを照射することにより、光が媒介する量子もつれ状態が現れることが、スーパーコンピュータを用いた大規模数値計算によってわかりました。特に物質中の格子振動(フォノン)間に量子もつれを生成されることにより、電子間よりも大きな量子もつれを生成させることが可能なことも示されました。量子情報理論を用いることによってこうした状態の詳細が理解されます。また、量子もつれ生成現象は、フェムト秒分光と呼ばれる実験手法によって観測可能であることを、理論計算によって示しました。
 この原理を利用して物質内に元来存在する量子もつれ状態を制御することによって、新たな機能を持った物質の創成へと繋がることも期待されます。また、光の量子状態を変えることによる新たな物性制御の方法へと発展することも考えられ、今後は光の量子性と物性との関連が重要な視点となっていくことが期待されます。
 さらに、この結果は量子もつれの「貯蔵庫」としてフォノンが有効であることを示しており、将来的にはこの原理を利用した量子メモリの実現も考えられます。
 本研究成果は、日本物理学会が発行する英文誌Journal of the Physical Society of Japanに注目論文(JPSJ Papers of Editors' Choice)として掲載されるとともに、同学会からJPS Hot Topicsとして国内外に向けて紹介されています。

量子もつれ状態が生成の図

詳細はこちら(PDF)をご覧ください。

<問合せ先>
国立大学法人宇都宮大学
工学部 教授 石田 邦夫
TEL:028-689-6101
FAX:028-689-6101
E-mail:ishd_kn※cc.utsunomiya-u.ac.jp
(※を半角@に置き換えてください)