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宇都宮大学牛乳「純牧」が日本初の「JGAPマーク付牛乳」として新発売

 宇都宮大学農学部附属農場の乳牛および肉牛の飼養管理工程が、本年3月に、持続的な農業生産と食の安全を推進するための制度"JGAP"に認証されました。その結果、宇都宮大学と両毛酪農業協同組合とで連携して製造・発売している宇都宮大学牛乳「純牧」が、牛乳としては日本で初めて、「JGAP農畜産物ロゴマーク」が添付されて発売されることとなりました。
 7月3日(金)から月に一回をめどに製造・販売しますが、新型コロナウイルス感染症の影響により、当面は学内者への限定発売となります。今後状況が好転した際には、峰キャンパスの販売所でどなたでも購入可能です。販売情報については、HP等でお知らせします。

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宇都宮大学牛乳「純牧」について
(1)GAP認証制度について
GAPとは、"Good Agricultural Practice"の略で、動物・植物や環境に優しく、かつ生産過程が明確な農業生産活動を認証する制度として、1990年代後半にヨーロッパで発足しました。近年は、SDGsの達成に貢献する農業生産を推進する認証制度として、あるいは食の安全を保証する制度として、世界各地で整備されつつあります。ロンドンオリンピック以来、オリンピック選手村の食材調達基準として設定されています。日本でも、2007年に運用が開始され、2017年に畜産分野を含めた"ASIAGAP"および"JGAP"として全国的に整備され、徐々に普及しています。これまで、宇都宮大学農学部附属農場においては、大学が推進するSDGsへの貢献の一環として、生物にも人にも環境にも優しい農畜産業の実現を目指して、様々な取組を進めてきました。その成果として、2019年11月には宇都宮大学のオリジナル品種"ゆうだい21"を栽培する水稲分野がASIAGAPに、2020年3月には乳牛および肉牛分野がJGAPに、それぞれ認証されました。

(2)乳牛分野のGAP認証について
日本では、GAP認証は、主に水稲や果実の分野で広がりを見せ、乳牛分野においては普及が遅れています。2020年3月末の時点で、水稲や果実等の認証農場数が6,731件あるのに対し、乳牛分野ではわずか15件に留まっています。宇都宮大学の乳牛分野の認証は、栃木県では初めて、大学でも初めてになります。これほど少ない理由としては、牛に食べさせる餌から、飼養管理方法、搾乳方法など、生産された生乳の安全を保証するためには、多くの複雑な工程の質を担保しなければならないことが挙げられます。また、水稲や果実においては、GAP認証を得た農場産の生産物は、GAP認証農場産の生産物としてロゴマークを添付して流通・販売され、消費者に届けることができます。これに対して牛乳は、複数の酪農家で生産された生乳をタンクローリーで集め、工場でまとめて「牛乳」として製品化する流通システムの関係で、GAP認証農家の生乳だけで牛乳を製品化するのは困難でした。

(3)宇都宮大学牛乳「純牧」のJGAP認証について
宇都宮大学では、2015年より、両毛酪農業協同組合(足利市)と連携して、宇都宮大学で生産された生乳だけで製造された牛乳「純牧」を生産・販売してきました。今回、宇都宮大学農学部附属農場における乳牛飼養管理および生乳生産工程がJGAP認証された結果、「純牧」は日本で2例目の"GAP認証された農場産の牛乳"となり、初めての「JGAP農畜産物ロゴマーク」が貼付されて流通する牛乳になりました。 
  
(4)宇都宮大学牛乳「純牧」の特徴 
①牛の健康を重視した生乳生産への取り組み
宇都宮大学では、乳牛の飼養管理について、行動学的および栄養学的なアプローチでウシの健康と快適性を向上させ、生乳の質の向上を目指してきました。具体的には、農場の広大な土地を利用した自給粗飼料の生産、液状Ca剤を用いた周産期の低Ca症予防、 トンネル換気を用いた畜舎衛生および暑熱ストレスの緩和など、 大学で実施した試験研究結果を日常の飼養管理に取り入れてきました。結果的に、年間を通じた生乳の品質は飛躍的に向上しました(表1)。
②放牧へのこだわり
宇都宮大学では、日本においては搾乳牛では数少ない放牧飼養で管理され、 自由な採草と適度な運動や日光浴によるストレス低減に取り組んでいます(図2)。 その結果、「純牧」には、生乳中の様々な成分、例えばβカロテンやビタミンE、共役リノール酸など、ウシにもヒトにも健康に良い成分が豊富に含まれます(図3)。さらに、生乳の乳脂肪中に溶け込んだこれらの成分をできる限りそのまま活かす「ノンホモジナイズド製法」が用いられ、放牧乳の旨味が引き出されています。



表1.宇都宮大学における生乳の乳質の向上
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図2.宇都宮大学の放牧環境
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(5)製品情報
①製造期間:放牧期間中に限定しており、5月上旬〜11月上旬になります。
②販売形態:製造元の両毛酪農業協同組合の牛乳製造ラインの都合により、300mlのプラボトル限定になります。
③価 格:1本210円で販売
④販売日:通常は、毎月第3金曜日とイベント時に、宇都宮大学峰キャンパス1号館(農学部棟)1F牛乳販売所(農場事務室)で販売しているのですが、今年度はコロナ禍の影響で、当面は不定期で学内予約販売のみとしています。
⑥ラベルのデザイン:「純牧」の文字と背景の絵を、学生による研究室内コンテストで選定。
「純牧」の名前とデザインについて、現在商標登録手続き中。

〈問い合わせ先〉
宇都宮大学農学部附属農場 担当者:農場長・畜産部門主任 長尾 慶和
〒321-4415 栃木県真岡市下籠谷443
Tel. 0285-84-2424
e-mail: ynagao※cc.utsunomiya-u.ac.jp
(※を半角@に置き換えてください)