広報誌UUnow60号 私のこだわり
UUnow60号から始まった新企画「私のこだわり」。
本学の教員の「個人としてのこだわり」に焦点を当て、研究室の外での意外な一面を紹介します。
記念すべき第1回は、共同教育学部の平井李枝准教授が登場!
本誌では載せきれなかったステージドレスへのこだわりやエピソードの全文を公開します。
※平井先生ご自身の言葉で語られた内容をそのままに掲載しています。
共同教育学部 音楽分野 平井李枝准教授
東京藝術大学ピアノ科卒業。グラナドスに関する学位論文とリサイタルにより音楽博士の学位を取得。作曲家としても活躍しており、ピアノ曲や校歌、合唱曲など40曲以上を発表。2014年から宇都宮大学教育学部専任講師。2020年9月から現職。
私と音楽とステージドレス
演奏家である私にとって、音楽の質の高さは当然のことですが、ステージドレスは、お客様をさらにその先の素晴らしい芸術の世界へと誘い、幸せにできる魔法の仕事着であると考えています。
初めてドレスを着て演奏会に出演したのは2歳の時でした。ヤマハ銀座店内のヤマハホールで開催された祖父・平井康三郎(作曲家)主催のコンサートで、父・平井丈二郎(ピアニスト)が作曲したピアノ曲「うさぎのメヌエット」を演奏しました。「りえちゃん、椅子にのぼれるの?本当に弾けるの?」とみんなに心配されながら、ピンクのドレスで楽しく演奏したことを今でも覚えています。
そこから私のピアニストとしての人生はスタートしたのですが、体が異常に柔らかかった私は、実は幼稚園時代からバレエを習いたいと思っていました。しかし、祖母・平井友美子(ヴァイオリニスト)による反対と、母方の叔父の激推しにより、なぜか少林寺拳法を習うことになってしまったのです。かわいい衣装を着てバレエを踊りたかったのに、道着を着て武道の稽古に励まざるを得なくなりましたが、小学校低学年大阪大会優勝という謎の肩書を持っています。

ドレスを着て祖父とデート(3歳)

少林寺拳法の大会での平井先生(小2)
小学校6年生で出場したコンクールでは、作曲家の中田喜直氏に「ピアノは素晴らしいけれど、ドレスにメガネはいただけない」という辛辣なコメントをいただいたり、ドレスを着て演奏会に向かうところをうっかり同級生に見られて、いじめられていたのに突然「姫」というあだ名をつけられ崇められたり、大学2年生の演奏旅行では、偉そうな司会者が自分の衣装を忘れたとばっちりで、私まで理不尽にもパニエを脱がされて、ふんわりのはずが、しょんぼりしたドレスにさせられたっけ。今、思い返せばとんでもないけれど、吹き出してしまいそうなエピソードはたくさんあります。
高校2年生ごろまで小学生体型だった私は、東京藝術大学附属音楽高校3年生で、やっと大人用ドレスを着用するようになりました。その後、東京藝大3年生の時に開催された学内演奏会では、初めて本格的なステージドレスを着用しました。ドレスブランド「AIMER」で一目ぼれした、ラメ糸で織られたまるでシンデレラのようなロイヤルブルーのドレスは、難解なオール・スクリアビン・プログラム※を華やかにしてくれました。その後、お気に入りのドレスは私の演奏会のよき相棒となるのですが、困ったことに、リピーターのお客様から「りえちゃん、いつも青いドレス。。。」と言われるようになってしまいました。
※スクリアビン:19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したロシアの作曲家。作品は高度な技巧と繊細な表現力を要求されることで知られています。
大学卒業後は大学院と並行して私立中高で教員もしていましたが、そのお給料の大半はほぼドレス代だったように思います。それでも、プログラムの雰囲気に合ったドレスは重要なので、色やデザインにこだわってドレスを増やしていきました。


デザインもおしゃれなドレスがたくさん...!


Dr.りえのおしゃれなクラシックの様子

衣裳部屋の様子
なんとこの後ろにも3倍くらいあるそう...

ドレスはひとつひとつカバーで包まれ、
大切に保管されています

ドレス姿の平井先生が描かれたお手紙
【関連リンク】
研究者総覧 平井李枝准教授
共同教育学部 芸術・生活・健康系