分野融合型研究



[バイオ×光学×化学×農学]

農作物細胞のクチクラ層突破イメージングプロジェクト


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●About

葉緑体は、植物細胞に特有の緑⾊の細胞⼩器官であり、光エネルギーを化学エネルギーに変換する光合成を担っている。葉緑体は、環境に応じて細胞内での配置を変えることが知られている。たとえば葉緑体は、光合成を最⼤化するために弱光に集まり、光ダメージを避けるために強光から逃げる。そのため、細胞内の葉緑体配置を理解することは、植物の⽣育を向上させるために重要である。
これまで研究代表者の児玉は、細胞観察が容易なコケ植物やシダ植物を⽤いて葉緑体配置の研究を⾏ってきた。その結果、葉緑体配置の制御に関わる低温センサーの発⾒など、多くの成果が得られている[PNAS 2017 など]。また最近では、レタスの葉緑体配置を診断することで、葉の⼤きさと厚さの調節に成功しており[Sci Hort 2019]、植物⼯場で使える技術として特許申請も⾏った[特許2020-19516]。以上のように、葉緑体配置に関する基礎⽣物学研究で得られた成果は農学研究に展開され始めている。
しかし、様々な農作物で葉緑体を観察するためには、ひとつ⼤きな障壁がある。それは、クチクラ層の存在である。農作物の葉の表⾯は、クチクラ層と呼ばれるロウ状の⽪膜で覆われているため、光の透過が不⼗分であり、細胞や葉緑体のイメージが不明瞭となる。また、クチクラ層の厚さや構成も農作物によって様々であり、たとえば、同じバラ科作物でもイチゴは⽐較的薄く、リンゴやビワは厚い。そのため、多様な農作物の細胞や葉緑体を単⼀の条件・⼿法で観察することは極めて難しい。⾔い換えると、クチクラ層の障壁を突破して多様な細胞や葉緑体を明瞭に観察することができれば、農学分野への応用の道が大きく開ける。
そこで本研究では、クチクラ層が厚い農作物における細胞イメージングの基盤技術を開発し、農学研究における細胞解析に変革を起こす。


●Member

児玉 豊   バイオサイエンス教育研究センター・准教授 研究代表者

⼤庭 亨   ⼯学研究科・教授  

鈴⽊ 智⼤  バイオサイエンス教育研究センター・准教授

⿊倉 健   農学部・講師

⽟⽥ 洋介  ⼯学研究科・准教授