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令和4年度宇都宮大学入学式 式辞

 桜が咲き誇るこの佳き日、宇都宮大学は、学部1006名、大学院431名、総勢、1437名の皆さんを、あらたにお迎えすることになりました。皆さん、ようこそ宇都宮大学にいらっしゃいました。宇都宮大学を代表し、お一人おひとりを、心から歓迎いたします。また、これまで温かく見守り、支えてこられたご家族ならびに関係の皆さま、心よりお祝い申し上げます。

 2019年から世界的に拡散している新型コロナウイルス感染症は、いまだに収束の兆しが見えません。しかし、その中で、本日の入学式は、全入学生が一堂に会して開催する運びとなりましたこと、大変嬉しく思っております。ただ、感染症対策のため、保護者の皆様方のご出席はお控えいただくなど、内容、規模、ともに従来とは異なった形で行っておりますことをご理解ください。

 また、今年度の授業については、基本、対面での実施としておりますし、海外留学も、少しずつ再開の段取りとなっておりますが、まだまだコロナ対応が必要な場面が数多くありますので、大学からの案内やお知らせ等をしっかりと確認するよう、心掛けてください。もちろん、様々な対策のもと、全学をあげて、安全、安心な学びの場の提供に務めておりますので、有意義で実りのある大学生活を送っていただきたいと思っております。

 さて、宇都宮大学は、150年近い歴史と伝統を持ち、そのルーツは明治から大正にかけて、栃木県に設置された二つの教育機関である、栃木師範学校と宇都宮高等農林学校にあります。それぞれ、現在の共同教育学部と農学部の前身です。その後、昭和に入り、地元からの強い要請を受けて工学部が、そして、平成には国際学部が、それぞれ設置されました。また、5年前の平成28年には全国で初めての文理融合型の地域創生系学部として地域デザイン科学部が設置され、現在、5学部からなる総合大学として新たな歴史を刻んでいます。また、大学院は、博士前期課程および博士後期課程、ともに、地域創生科学研究科という1研究科に統合されたものとなっています。皆さんを含め約5千名の学生が学び、330名の教員と200名の事務職員が皆さんを支えており、これまでに約6万人の学生が本学を巣立ち、社会の第一線で活躍してきています。

 宇都宮大学は、栃木県唯一の国立大学法人として、地域の知の拠点であり、中核となるべく、教育と研究を推進しています。「地域とともに学生の未来をつくり、学生とともに地域の未来をつくる」をスローガンに掲げ、学生を大切にし、地域と連携する取組みを進めております。「地域」という言葉からは、何か狭い気がするかもしれません。しかし、広く世界に向かってはばたくためにも、しっかりとした自分の足もと、足場を固める必要がありますし、どの世界に行っても、そこには「地域」というもの、「地域」という考え方があります。したがって、皆さんにとって、今後、未来へ向かって進むためにも、「地域」というものを意識することは重要だと考えております。

 皆さんは、どのような夢を持って、どのような自分の未来を想像して、宇都宮大学に入学されましたでしょうか。社会へ、未来へはばたくために、確固たる夢を持って入学してきた人に対しても、また、これから自分の夢を描こうとしている人に対しても、宇都宮大学は、その夢の実現をサポートします。そのために、本学では、教育プログラムを一層充実させるための色々な改革を進め、教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、また、研究推進のための施設や設備の拡充など、教育研究環境の充実を図り、教職員一体となって提供しています。また、今年度より、「宇大スタンダード」というものを定めています。これは、専門分野に関する知識や技能とともに身に付けて卒業していただきたい、「学修力」「情報活用力」「論理的思考力」「表現力」「協働力」「課題解決力」という6つの汎用的能力のことで、この6つの力は、大学での学びに留まらず、社会に出た後も役立つものであると考えています。入学試験に合格し、入学されたこと、これは大きな目標を一つクリアされたことでありますが、一方、新たなスタートでもあります。皆さんの前には、無限の未来、可能性が広がっています。どうぞ、色々な力を身に付けて、ご自分の夢に向かって進んでください。

 しかし、どれだけ環境が整っていても、皆さんが、自らそれを活かさなければ、夢の実現には届きません。大学では、受け身ではなく、自ら進んで掴み取り、学びとることが必要です。この「自ら」という姿勢は、社会に出てもいっそう必要となります。自分の夢の実現に向けて、積極的に取組んでください。宇都宮大学では、「3C精神」というものを大切にしています。それは、「Challenge:主体的に挑戦する」、「Change:自らを変える」、さらに「Contribution:広く社会に貢献する」の3つのCです。この「3C精神」に加えて、「3Cアクション」も掲げています。これは、「Connect」「Commit」「Collaborate」の3つのCで、主体的に社会とConnect繋がり、責任を持って社会にCommit関与し、多面的に社会とCollaborate協働する、というもので、社会との繋がりを大切にしながら行動しよう、というものです。この「3C精神」と「3Cアクション」においても「自ら」という姿勢が重要です。宇都宮大学の一員となられた皆さんには、ぜひとも自分の夢の実現のために、自ら未来を切り拓く力、より良き社会づくりを担う力を養って頂きたいと思います。

 ところで、今年の4月より、民法における成年年齢が18歳となりました。明治時代からの約140年間、日本での成年年齢は20歳と定められていましたので、大きな変化です。民法で定める成年年齢には、「一人で契約をすることができる年齢」という意味や、「父母の親権に服さなくなる年齢」という意味があります。つまり、成年に達すると、自分の意思で様々なことができるようになるということです。ここでも、「自分で」「自ら」ということが大事なポイントです。権利もできますが、責任も重大となる、ということでもあります。自分で考え、しっかりと判断し、社会の一員として、責任を持っての行動や振舞いができるように努めてください。
 なお、成年年齢が18歳となったからといって、飲酒や喫煙などは変わらず20歳から、となっていますので、今回の変更で、できるようになること、これまでと変わらないことをしっかりと確認してください。

 さて、自らの夢を実現させるために、皆さんは、学部や学科、いわゆる専門分野を選んで入学されてきたことと思います。今後、その専門分野を学び、醸成されていかれることになりますが、実は、幅の広い知識や教養に支えられてこそ、高い専門性は確立されます。皆さんは、自分が「文系」と「理系」のどちらかだと思っておられませんでしょうか。また、自分は文系だから理系の学びは不要だ、とか、例えば、工学部で機械を学びたいのだから、同じ工学系でも情報や電気、化学などの勉強は不要だ、などと思っておられないでしょうか。もちろん、専門分野を極めることは重要です。しかし、専門分野とは異なる分野の多様な知識、知見が加わることにより、新たな発想が生まれ、より高い専門性が活かされることになります。専門性を深める一方で、全く関係なさそうな内容も含めた多くの分野に触れるように努めてください。絶対にどこかで役に立ちますし、繋がることを保証します。大事なことは、様々な分野のそれぞれの考え方や方法に触れ、多様で幅の広い複数の目、「複眼」という視点を持ち、「複眼」をもって物事にあたることです。そうすることにより、変化に対応する柔軟さも得られ、新しいものへのチャレンジも図れることになります。繰り返しになりますが、文系、理系の枠を越えた幅の広い学びをし、複眼的な視点を身に付けてください。

 ところで、大学時代の学びは、いわゆる授業での学びだけではありません。大切な学びの一つは、多くの人間と触れ合い、また、社会での実体験を通して、人間としての幅を広げることです。例えば、サークル活動やボランティア活動に参加し仲間や友だちをつくるなど、国内外の色々な場面で多くの人間と出会う、これらも大切な学びです。さまざまな場所や機会で人と触れ合い、議論や意見交換をし、時に感情をぶつけ合ったりすることで、自分とは異なる視点や考え方があることを知る、これも「複眼」です。このように、相手の想いを理解し、相手を尊重できる豊かな人間性を育むこと、これが、コミュニケーション力の醸成でもあります。他人を思いやる力を身に付けることが、自分も受入れられることに繋がります。一人ひとり、個々の存在とその意思は非常に重要で大切なものですが、皆さんは、独りで存在しているわけでも、一人で成り立っているわけでもありません。多様で多彩な「他」の存在とともに、色々な場面で共に進んでいく、共に創り上げていくという「共創:co-creation」というものも重要です。これから大学生活を送る上で、この「共創」と「複眼」というキーワードを心に留めておいてください。

 ただ、冒頭にも申し上げました通り、コロナ禍の現在、3密を避けるなど、ウイズ・コロナでの人とのコミュニケーション、大学生活、社会生活が必須となっており、色々な制限や制約が存在していることも事実です。しかし、この状況への対応も、皆さん自身が、自ら、その対応を創り出すことで、より良いものにできるはずです。もちろん、宇都宮大学は全学、全教職員を挙げ、地域とも協力しながら、安心、安全な場の提供に務め、充実した大学生活を送れるよう皆さんをサポートします。安心して、大学を頼ってください。

 宇都宮大学で学び、逞しく成長された皆さんと卒業、修了を祝い合う日を楽しみに、本日の私の式辞といたします。みんなでがんばって進みましょう!

令和4年4月5日
国立大学法人宇都宮大学長
池田 宰


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