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令和3年度宇都宮大学入学式 式辞

 花吹雪が風に舞うこの佳き日、宇都宮大学は、学部および大学院を合わせて、総勢、1,383名の皆さんを、あらたにお迎えすることになりました。皆さん、ようこそ宇都宮大学にいらっしゃいました。宇都宮大学を代表し、お一人おひとりを、心から歓迎いたします。また、これまで温かく見守り、支えてこられたご家族ならびに関係の皆さま、心よりお祝い申し上げます。

 さて、まず、世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルス感染症でお亡くなりになられた方々に心からお悔やみを申し上げるとともに、罹患し、闘病をされておられる方々にお見舞いを申し上げます。また医療関係者の方々をはじめとして、社会生活を支えてくださっている方々に深く感謝申し上げます。

 このコロナ禍の影響で、昨年度は入学式を開催できずにおりましたが、今年度は、感染症対策を施した上で、新入生の皆さんに出席いただき、挙行できる運びとなりました。しかし、保護者の皆様方、来賓の方々のご出席はご遠慮いただき、密を避けるために3回に分けて実施する方策をとっており、この回は、地域デザイン科学部と工学部に入学された皆さんの入学式となっています。このような、ウイズ・コロナの対応となっておりますことを、どうぞご理解ください。

 また、現在、世界的にも、国内においても、未だにコロナ禍の収束の兆しが見えません。来週から始まる今年度の授業についても、基本、対面での実施としていますが、ウイズ・コロナの対応のため、密を避けるために、オンライン授業との併用も行います。また、海外留学もなかなか難しい状況が続いています。もちろん、様々な対策のもと、安全な学びの場の提供に努めておりますので、有意義で実りのある大学生活を送っていただきたいと思いますが、講義の実施の詳細などについては、来週実施されるガイダンスや大学Webサイトの掲示等をしっかりと確認するようにしてください。

 さて、宇都宮大学は、150年近い歴史と伝統を持ち、そのルーツは明治から大正時代にかけて、栃木県に設置された二つの教育機関である、栃木師範学校と宇都宮高等農林学校にあります。それぞれ、現在の教育学部と農学部の前身です。その後、地元からの強い要請を受けて昭和39年に工学部ができ、平成6年には全国に先駆けて国際学部が設置されました。そして5年前の平成28年には全国で初めての文理融合型の地域創生系学部として地域デザイン科学部が設置され、現在は、5学部からなる総合大学として新たな歴史を刻み始めています。現在は、皆さんを含め5千名の学生が学び、350名の教員と210名の事務職員が皆さんを支えており、これまでに6万人の学生が本学を巣立ち、社会の第一線で活躍してきています。

 宇都宮大学は、栃木県唯一の国立大学法人として、地域の知の拠点であり、中核となるべく、教育と研究を推進しています。今年度より、「地域とともに学生の未来をつくり、学生とともに地域の未来をつくる」をスローガンに掲げ、これまで以上に、学生を大切にし、地域と連携する取組みを進めます。「地域」というと、何か狭い気がするかもしれません。しかし、広く世界に向かってはばたくためには、しっかりした自分の足もと、足場を固める必要がありますし、どの世界に行っても、そこには「地域」があります。したがって、皆さんにとって、今後、未来へ向かって進むためにも、「地域」というものを意識することは重要です。

 皆さんは、どのような夢を持って、どのような自分の未来を想像して、宇都宮大学に入学されましたでしょうか。皆さんの前には、無限の未来、可能性が広がっています。社会へ、未来へ羽ばたくために、確固たる夢を持って入学してきた人に対しても、また、これから学びながら、自分の夢を描こうとしている人に対しても、宇都宮大学は、その夢の実現をサポートします。そのために、本学では、学部や大学院の改組、基盤教育を含めた教育プログラムの改革、などに取組み、さらに教育DX(デジタルトランスフォーメーション)の推進、研究推進のための機構の整備、それらを支える施設や設備の拡充など、教育研究環境の充実を図り、教職員一体となって提供しています。しかし、どれだけ環境が整っていても、皆さんが、自らそれを活かさなければ、夢の実現には届きません。大学では、受け身ではなく、自ら進んで掴み取り、学びとることが必要です。この「自ら」という姿勢は、社会に出てもいっそう必要となります。自分の夢の実現に向けて、積極的に取組んでください。

 宇都宮大学では、「3C精神」というものを大切にしてきました。それは、「Challenge:主体的に挑戦する」、「Change:自らを変える」、さらに「Contribution:広く社会に貢献する」の3つのCです。今回、さらに、あらたな宇都宮大学スピリットとして、「3Cアクション」を掲げました。これは、「Connect」「Commit」「Collaborate」の3つのCで、主体的に社会とConnect繋がり、責任を持って社会にCommit関与し、多面的に社会とCollaborate協働する、というもので、社会との繋がりを大切にしながら行動しよう、というものです。この3C精神と3Cアクションにおいても「自ら」という姿勢が重要です。宇都宮大学の一員となられた皆さんには、ぜひとも自分の夢の実現のために、自ら未来を切り拓く力、より良き社会づくりを担う力を養って頂きたいと思います。

 さて、自らの夢を実現させるために、皆さんは、学部や学科、いわゆる専門分野を選んで入学されてきたことと思います。今後、その専門分野を学び、醸成されていかれることになりますが、実は、幅広い知識、教養に支えられてこそ、高い専門性は確立されます。いわゆる、異分野の多様な知識、知見が加わることにより、新たな発想が生まれ、より高い専門性が活かされます。今後、専門性を深めるとともに、全く関係なさそうな内容も含めた多くの分野に触れるように努めてください。絶対にどこかで役に立ちますし、繋がることを保証します。
 本学では、「文理融合」の取組みを進めていますが、大事なことは、いわゆる「文系」と「理系」、それぞれの考え方や方法に触れ、多様で幅の広い「文理複眼」という視点を持つことです。世の中のことは全て繋がっています。それを理解する、把握する、つまり「文理複眼」です。
 一例ですが、英語の「hot」という単語がありますね。これには様々な意味があります。思いつくまま、挙げてみてください。温度が高いという意味の熱い、気温が高いという意味の暑い、hot newsの場合は新しいという意味、これは、料理の出来立てのほやほやは熱い、というところからきています。また、激しいという意味もありますが、これも、激しく運動すると熱くなる、というところからきています。逆に落ち着いていることをcoolといいますよね。さて、このような熱や温度に関係する意味とは別にhotという単語には「辛い」という意味もあります。hot chili pepperなんてありますね。熱いと辛い、関係があるのでしょうか? 実は、人間が「辛い」と感じるセンサー受容体たんぱく質というものがありますが、これと、「熱い」と熱を感じるセンサー受容体たんぱく質は同じものだということが生物学的に分かりました。つまり、人間が熱を感じる機能と辛いと感じる機能は同じだ、ということです。したがって、hotという英単語に、熱いと辛いという意味があるのは、生物学的にも正しい、ということになります。語学と生物学がここで実は繋がっている、ということになります。
繰り返しになりますが、文理の枠を越えた幅の広い学びをすることで、複眼的な視点を身に付けてください。自らの学びの幅を広げ、社会で活躍するために重要です。

 ところで、大学時代の学びは、いわゆる授業での学びだけではありません。大切な学びの一つは、多くの人間と触れ合い、また、社会での実体験を通して、人間としての幅を広げることです。サークル活動やボランティア活動に参加し仲間や友だちをつくる、あるいは国内外での旅先などで多くの人間と出会う、これも大切な学びです。さまざまな場面で人と触れ合い、親しい友人や仲間をつくり、議論や意見交換をし、時に感情をぶつけ合ったりすることで、相手の想いを理解し、相手を尊重できる豊かな人間性を育むことができます。いわゆるコミュニケーション力の醸成でもあります。他人を思いやる力を身に付けることが、自分も受入れられることに繋がります。

 ただ、冒頭で申し上げたように、コロナ禍の現在、3密を避けるなど、人とのコミュニケーション、社会生活など、これまでと異なるウイズ・コロナでのコミュニケーションを取りながらの大学生活が必須となっています。しかし、この状況への対応も、皆さん自身が、自ら、その対応を創り出すことで、より良いものにできるはずです。もちろん、宇都宮大学は全学、全教職員を挙げ、地域とも協力しながら、皆さんをサポートします。安心して、大学を頼ってください。
 宇都宮大学で学び、逞しく成長された皆さんと卒業を祝い合う日を楽しみに、私の式辞といたします。みんなでがんばって進みましょう!

令和3年4月3日
国立大学法人宇都宮大学長
池田 宰

式辞(国際学部 共同教育学部 農学部)
・こちら(PDF)をご覧ください。
式辞(大学院地域創生科学研究科博士前期課程 博士後期課程 教育学研究科専門職学位課程)
・こちら(PDF)をご覧ください。



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入学式の写真3 入学式の写真4