重要なお知らせ

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平成29年度学位記授与式(3月23日) 式辞

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   本日、ご来賓ならびに関係者の皆様にご臨席いただき、平成29年度の学位記授与式を挙行できますのは、本学にとって大きな喜びです。ただいま学士949名、修士343名、博士10名、合計1302名の皆さんに学位記を授与いたしました。また、去る3月15日には、宇都宮大学・東京農工大学・茨城大学の3大学で構成される東京農工大学大学院連合農学研究科から、本学教員の指導を受けた5名の方に博士の学位が授与されました。それぞれの学位を修め、本学から巣立っていく全ての皆さんに、そうして今日のこの日を心待ちにしてこられたご家族の皆様に、宇都宮大学の教職員を代表して心よりお祝い申し上げます。本当におめでとうございます。
   また、この中には51名の留学生の方がいらっしゃいます。母国を離れ生活習慣等の違いも乗り越えながらの学位取得、本当にご苦労様でした。

   さて、現在、少子高齢化や人口減少と地方の衰退、国家財政の悪化や経済格差の拡大、グローバル化やデジタル革命に伴う産業構造や就業構造の変質など、この国を取り巻く環境は厳しさを増しています。こうした情勢は世界的にみても変わりはなく、さらには国際紛争の複雑化などと合わせ、自由経済や民主主義といった現代社会を支えてきた基本的な仕組みそのものが世界的に揺らいでいます。言い換えれば、皆さんは、これまでの延長線では対応できない社会に飛び出していかなければないのです。そんな皆さんに三つのことをお伝えしたいと思います。

   まず一つ目は、少し永くなりますが、皆さんが授与された「学位」についてです。
   私は学位を「学」と「位」二つの観点から考えています。先ず「位」についてですが、「位」という文字には品格という意味があります。学位を授与されるにあたり、皆さんには、この品格という言葉を噛みしめてほしいと思います。
   例えば、学位取得までには、熱心な指導教員やよき友人、そして何よりも皆さんを理解して下さったご家族など、多くの方々の支えがあったはずです。更に、本学で皆さんを教育する費用の三分の二近くが税金で賄われていることを考えれば、国民からのご支援も忘れてはいけません。多くの支えに対する感謝とそれに報いる責任感、こうした認識を持てることこそ人間としての品格の基礎です。一人よがりでなく、相手の思いや立場を尊重し、感謝を忘れない生き方、そうした積み重ねによって、皆さんの品格も磨かれていくはずです。ぜひとも、学位という言葉に込められた、人間としての品格というものを強く意識し、生涯それを磨き続けて欲しいと思います。

   次は「学」についてです。「学」はもちろん「学ぶ」ということですが、では皆さんはいったい何を学んだのでしょうか。
   学士、修士、博士、それぞれ到達レベルは異なりますが、広い教養に基づく学術的な素養や知識を修得した証明です。宇都宮大学は国立大学として、そうした意味での「学」の質は十分に保証しておりますので、自負を持っていただきたいと思います。
   一方で、皆さんが、大学で身につけた知識は、社会の中で直ぐに役立つことはめったになく、通用しないことの方が多いでしょう。また、仮に直ぐに役立つ技能を習得していたとしても、それは直ぐに旧くなって使えなくなってしまいます。しかし、安心してください。皆さんは、学位を取得する過程で、どんな局面で役立つもの、いつまでも旧くならない大切なものを学んだのです。なぜならば、皆さんが学んだ「学」とは、単なる個別の知識や技能を指すのではなく、知識を基礎にして自分の頭で目の前の事実をつなぎ合わせ、新たな知識や智慧として組み上げるという一連の知的能力を指すからなのです。
   例えば学位論文を作成した時のことを思い出して下さい。現実の問題や先行研究に基づいた課題の設定、課題を解くために挑戦しつづけるチャレンジ精神、誰も知りえなかったような事実を把握・実証しようとする探求心と柔軟かつ論理的な思考、事実を客観的かつ体系的に整理し伝える経験、そして、あきらめなければ困難は乗り越えられるという自信など、さまざまなものを身につけたのです。こうした知的能力の連鎖こそが大学での学びの本質であり、皆さんが本学で身につけた「学」は、一生の財産になるはずです。

   学位を授与された皆さんには、新しい変化に対応し、あらたな課題を解決する知的能力、すなわち「学」と、その「学」を人々や社会のために正しく役立たせる人としての品格、すなわち「位」を活かし、それぞれの職場で、あるいは生活の中で、自信とプライドを持って、自らの人生を切り拓き、良き社会づくりに貢献して頂きたいと思います。

   二つ目は「宇大スピリッツ:3C精神」についてです。
   本日は皆さんお一人おひとりにブルーのストールをお渡ししました。これには、皆さんに忘れないでほしい「本学の熱い思い」が込められています。ストールをご覧ください。3本の線が描かれています。この3本の線は、本学が組織として大切にし、全ての学生・教職員にも大切にして欲しいと願う「宇大スピリッツ:3C精神」を象徴しています。「3C」とは、明るい未来を開拓するために主体的にChallenge・挑戦することの「C」、時代の変化に対応し自らをChange・変化させることの「C」、そして、広く社会にContribution・貢献することの「C」のことで、学生と教職員がこの「3C」を共有し、一体となって未来を開拓し、社会に貢献しようとする強い決意を表しています。

   宇都宮大学は、この3C精神に基づき、地域における知の拠点として、さまざまな挑戦を行ってきました。ご存知のように皆さんの在学中だけ見ても、地域デザイン科学部が新設され国際学部の強化が進みました。また、来年4月からは大学院組織の大幅な改革と工学部改組を実現し、時代や社会の要請に合った、幅広な視野も備えた専門教育を目指そうとしています。こうした構想は、まさに宇都宮大学が、どのように社会に貢献するかということに正面から向き合い、主体的に挑戦し、自らを変化させてきた結実、つまり「3C精神」の賜物なのです。

   野球界のレジェンドであるイチロー選手は、かつて4000本安打を記録した時に「4000本の成功の裏には8000本の失敗があった」とおっしゃいました。また、ホンダの創業者である本田宗一郎さんは「私の仕事の99%は失敗の連続であった。失敗を怖れるよりも、チャレンジしないことを怖れなさい。」ともおっしゃっています。どうか皆さんも、失敗を恐れず、挑戦を続け、満足ゆく人生を送っていただきたいと願っています。挑戦すればするほど厳しい困難に直面することがあるかもしれませんし、新たな環境に飛び出すために、不安になることもあるでしょう。そんな時には、このストールを眺めて「3C精神」を思い出してください。本学で学位を取得し、「品格」と「知的能力」を身につけた皆さんなら、必ず、乗り越えられると確信しています。

   最後の三つ目は皆さんの母校についてです。
   皆さんが、これからそれぞれの人生を切り拓いていく中で、判断に迷い、悩み、誰かに相談したくなることもあるはずです。あるいは違った切り口の学びが必要になることがあるかも知れません。そんな時には、いつでも宇都宮大学に戻ってきてほしいと思います。指導教員をはじめ教職員一同、一緒に悩み、考え、みなさんを支援したいと思っています。あるいは、チャレンジに成功し、祝杯を上げたいときには、ぜひ宇都宮大学に戻ってきてください。宇都宮大学は皆さんにとって、いつでも戻ってくることができる母校、いつまでも信頼できる母校であり続けたいと思っています。どうか母校が皆さんを支え続けているということを忘れないでください。

   以上、学位への誇りと自信、3C精神、皆さんを支え続ける母校についてお伝えしました。こうした全ての想いを込め、新たに旅立つ皆さんに対して、学位記授与式の式辞をこの言葉で結びたいと思います。
   みなさん、元気にいってらっしゃい。良き人生を!

 

                                                                                                                                    平成30年3月23日 
国立大学法人宇都宮大学長
石田 朋靖
 
 
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