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[プレスリリース]自己修復するレーザー加工装置の開発

 新開発したレーザー加工装置は、内的・外的要因によって生じたズレを自動的に修復する機能を備えています。一般に、レーザー加工装置は、工場現場で用いられ、その設置環境は静粛とは言えません。また、装置内の光学部品が加工用高強度レーザー光によって劣化します。空間光制御技術とディジタルフィードバック制御技術を組み合わせる事で、そのような状況下でも、長期的に安定なレーザー加工を実現します。
 本研究成果は、6月15日にアメリカ光学会 (The Optical Society (OSA) )が出版する論文誌 Optics Letters誌に掲載されます。


【ポイント】
●新開発のレーザー加工装置には、レーザービーム形状を自在に整形できる空間光制御技術が実装されている空間光制御技術とは、1本のレーザービームを 1000本に分岐したり、円形ビームを四角形ビームにするなど、レーザー加工の高速化や高効率化に有効な産業技術として利用されつつある。

●そのキーデバイスである液晶空間光変調素子(LCOS-SLM: liquid-crystal spatial light modulator)は、計算機ホログラム(CGH: computer-generated hologram)を表示するために最適化されているが、プロジェクタに使われている液晶ディスプレイと同様にピデオ信号で画像表示される。

●宇都宮大学オプティクス教育研究センター・情報フォトニクス研究室の早崎教授と長谷川助教、張博士課程大学院生は、ホログラフィックレーザー加工と呼ばれる、計算機ホログラムを用いたレーザー加工の研究を行ってきた。

●本研究では、IMRA AMERICA高橋氏、浜松ホトニクス豊田氏と協力して、空間光制御とディジタルフィードバック制御とを統合した、新しいレーザー加工法を開発した。

●その方法は、 LCOS-SLM上に表示されたCGHの再生像を加工対象に照射すると同時に、カメラで観測し、その観測画像からCGHを再計算する。これを連続的に繰り返すことで、レーザー加工装置は、外乱による光学系の変動や部品の経年劣化を自動的に修復しながら、ホログラフィックレーザー加工を実行する。

●現在、戦略的イノベーション創出プログラム(SIP)第2期「光・量子を活用したSociety5.0実現化技術 (空間光制御技術に係る研究開発)」の下、製造における国際間競争の激化や生産者人口の減少の課題の解決手段の1つである、製造のスマート化に向けて、浜松ホトニクス株式会社に協力して、国内外における空間光制御技術の社会実装を目指している。

●開発技術は、所望の加工パターンを自動生成するため、 空間光変調技術に詳しくないユーザーでも、高速・高効率なホログラフィックレーザー加工を実行可能とし、レーザー加工や光技術に非専門な研究者・技術者や中小企業における生産等、その利用機会の拡大に資する。

詳細はこちら(PDF)をご覧ください。

【問合せ先】
宇都宮大学 オプティクス教育研究センター
副センター長/教授 早﨑 芳夫(はやさき よしお)
TEL:028-689-7114
E-mail: hayasaki※cc.utsunomiya-u.ac.jp
(※を半角@に置き換えてください)