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[プレスリリース]世界初!光渦によるねじれ加工を実現し構造物形成過程の再現に成功 -光渦による物質のねじれ形成の解明に迫る-

 光渦(ひかりうず)とは、らせん波面をもつ特殊な光波であり、従来の光がもたない軌道角運動量を利用した物質を回転させる効果があることで、物質操作やレーザー加工技術の発展が期待されています。従来の光渦研究の主な関心は加工後の表面形状であり、加工現象過程に関する研究は皆無で、物質のねじれ形成は未解明でした。
 九州大学大学院システム情報科学研究院の中村大輔准教授、池上浩教授、川本実季大学院生らは、宇都宮大学の東口武史教授、埼玉医科大学の若山俊隆教授、米国パデュー大学の砂原淳客員教授(大阪大学招へい准教授)との共同研究により、偏光状態を実測した特殊な光「光渦」を用いて半導体表面のねじれ加工を実現し、世界で初めてその形成メカニズムを2次元輻射流体シミュレーションにより解明し、加工構造物の形成過程を再現しました。
 本研究では、光渦による物質のねじれ形成を明らかにするため、実験に使用する光渦の偏光状態を実測評価したうえでねじれ構造物の形成を実証し、さらに、レーザー生成プラズマの2次元輻射流体シミュレーションにより、プラズマ圧力と構造物形成の相関を世界で初めて明らかにしました。
 本研究成果は2020年12月1日(火)に英国科学誌Scientific Reportsにオンライン掲載されました。本研究は、日本学術振興会科学研究費(JP18K12114、JP20H02157)、カシオ科学振興財団、村田学術振興財団、天田財団の支援により行われました。


(参考図)
ドーナツ状の強度分布をもつ光渦を物質に照射することでねじれた円錐構造物が形成される(上図)。
その形成過程を示す輻射流体シミュレーション(下図)。

研究者からひとこと:
光渦は、2018年ノーベル物理学賞の光ピンセットの公転運動や2014年ノーベル化学賞の超解像顕微鏡の光源に用いられる魅力的な光です。本研究成果は、現在、研究者の中で議論されている「光渦が物質に与える効果」の解明に迫るもので、今後の光渦レーザープロセス技術の発展への貢献が期待されます。

【問合せ先】
国立大学法人宇都宮大学工学部
教授 東口 武史(ひがしぐち たけし)
E-mail: higashi※cc.utsunomiya-u.ac.jp
(※を半角@に置き換えてください)