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[プレスリリース]世界初!CO₂を原料とする 完全リサイクル可能なカーボンニュートラルコンクリートの基礎的製造技術を開発 -NEDO ムーンショット型研究開発事業「C⁴S 研究開発プロジェクト」-

【発表のポイント】
◆大気中のCO₂と水とカルシウム(Ca)を含む使用済みコンクリートのみを用いて、砕かれた使用済みコンクリートの粒子間に炭酸カルシウムを析出させることにより、コンクリートが硬化するという新たな基礎的製造技術の開発を行った。
◆この手法を用いると、使用済みコンクリートが過去に排出したCO₂と最大で同等程度のCO₂を固定化できるため、コンクリートはカーボンニュートラルとなる。
◆薄く大気中に広がって存在しているCO₂と、全国各地に存在しているコンクリート構造物中のCaの地産地消的な有効利用が可能になるとともに、建設分野のCO₂排出削減に大きく貢献することが期待される。
◆このコンクリートは何度でもリサイクル完全な資源循環型である。

【発表概要】
 東京大学、北海道大学、東京理科大学、工学院大学、宇都宮大学、清水建設株式会社、太平洋セメント株式会社、増尾リサイクル株式会社は、NEDO ムーンショット型研究開発事業「C⁴S 研究開発プロジェクト」を実施しています(図1)。2050 年カーボンニュートラル社会の実現に大きく貢献することを目的としたものです。本プロジェクトでは、薄く大気中に広がって存在しているCO₂と、全国各地に存在しているコンクリート構造物を資源とみなし、それらと水のみを原料として、カーボンニュートラルとなる次世代のコンクリートを開発しています。このコンクリートは、何度でも繰り返しリサイクルが可能となります。


図1:CCC(カルシウムカーボネートコンクリート)によるCO₂とCaの資源循環

図1:CCC(カルシウムカーボネートコンクリート)によるCO₂とCaの資源循環


 プロジェクトの一環として、このたび東京大学大学院工学系研究科の丸山一平教授(コンクリート製造技術開発の主担当)、野口貴文教授らは、このカーボンニュートラルコンクリートの製造を可能とする製造技術の基礎を開発しました。
 従来、コンクリートの製造にはセメントが必要不可欠です。しかし、セメントの生産時には石灰石の主成分である炭酸カルシウムの分解などによって多くのCO₂が排出されており、人類の活動由来のCO₂のうち、約5%がセメント生産によるものと言われています。今回開発したコンクリートの製造技術は、化石の生成プロセスと同じように、砕いた使用済みコンクリートの粒子間に炭酸カルシウムを強制的に析出させて一体化させることに大きな特徴があります。単位体積あたりに固定化されるCO₂量は、等量のコンクリートが過去に排出したCO₂量を上回ります。また、全国どこにでも存在しているコンクリートなどに含まれているカルシウム(Ca)と大気中のCO₂と水とを原材料(資源)としているため、薄く分散した資源の遠距離回収を行う必要はなく、地産地消であることにも大きな意義があります。さらに、このコンクリートは、将来にわたって何度でもリサイクルが可能なため、資源枯渇・廃棄物発生の問題も解消されます。
 また、本成果は、今後の建設分野のCO₂排出抑制に大きく貢献するとともに、将来、火星上でのコンクリートの製造にも応用できる可能性があります。

詳細はこちら(PDF)をご覧ください。

<お問い合わせ先>
藤本 郷史(ふじもと さとし)
宇都宮大学 准教授
地域デザイン科学部 建築都市デザイン学科
Tel/Fax: 028-689-6207
e-mail : fujim※cc.utsunomiya-u.ac.jp
(※を半角@に置き換えてください)