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平成31年 石田学長年頭挨拶

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工学研究科石川智治先生、教育学部佐々木和也先生他の先生方が組織する感性情報科学研究会の皆さんが、
経産省の競争資金を使って研究した結城紬生産支援システムにより試作した着物を着用しています。
 
 
年頭のご挨拶
 
   明けましておめでとうございます。平成最後の年の仕事始めにあたり、ひとことご挨拶を申し上げます。皆さん、それぞれ晴れやかな新年を迎えられたことと思います。今年の冬季休業は比較的ゆったりとした時間が取れ、日ごろのお疲れも少しは癒されたのではないかと期待しておりますが如何だったでしょうか?
 
   さて、国内外の社会構造が資本集約型の工業社会から知識集約型の知識基盤社会へと急速に転換する一方で、様々なひずみが社会の中で拡大を続けており、国連の定めた持続可能な開発目標SDGsの達成が大きな課題としてクローズアップされています。こうした歴史的な転換が続く中にあって、知の拠点である大学には、新たな知の創出や新たな社会に柔軟かつ良識を持って対応できる人材の育成を通して、持続可能な社会の構築に貢献することが期待され要請されています。年頭に当たり、これからの大学像を展望するために必要となる観点を3つ考えてみました。
   その中の一つは、キーワード的に言えば幅広な教養と分野融合です。これからの社会に求められるのは、個々の能力・適性に合った専門的な知識に加えて、幅広い分野や考え方を俯瞰して、自らの判断をまとめ表現できる力を備えた人材であり、論理的思考力と幅広い教養に裏打ちされた高い倫理性と良識が不可欠となります。例えば幅広く知られる創薬や農業あるいは自動車や素材産業などでの産業のイノベーションだけでなく、社会デザインや多文化共生という今後の社会を構築する上でのソーシャル・イノベーション(?)も含め、文系理系といった枠組みを超えた分野の連携による新しい知の創造とその社会実装が期待されています。こうした状況にあって、大学には幅広な教養と分野融合を基礎に、未来を支える人材と新たな知の創造による持続可能な社会へ寄与することが強く求められています。
   二つ目のキーワードはダイバーシティ、すなわち多様性です。少子化と大学進学率の上昇やグローバル化が進む中で起こる学生のポテンシャルや国籍の多様化、性別や国籍あるいは職業履歴など含めた教員のバックグラウンドの多様化、更には、社会人やシルバー世代などへのリカレント教育も含めた学ぶ年齢層の多様化など、将来的に大学内の多様性が進むことは間違いありません。多様性を尊重し、多様な価値観が交差する中で生み出される、新たな学びや知の創造を十分に意識し、教育・研究の質を高めることが求められます。
   三つ目のキーワードは地域の持続的な発展、すなわち地域発のSDGsです。大学における教育・研究の成果によって、地域の持続的な発展という課題を念頭に置き、次世代の育成も含めた地域社会・地域経済の活性化を担うという役割も強く求められています。これは単に地域だけの課題ではありません。Think Globally、Act Locallyの言葉があるように、国際的なSDGsを進める上でも、まずは身近な地域の持続性を強く意識して教育・研究を進めていかなければなりません。
   まだまだいくつものキーワードが上げられますが、いずれにしても、こうした観点を念頭に置きつつ大学づくりを進め運営していく必要があることを、全ての構成員の皆さんと共有しておきたいと思います。
 
   国立大学運営費交付金も含め大学の予算状況は将来にわたり予断を許しませんが、本学は、三つのキーワードを睨みつつ、着実に歩を進めています。具体的に確認してみましょう。
   まずは皆さんにご苦労をおかけした大学院改革では、地域創生科学研究科が4月にスタートします。細分化された専門的知識だけではなく、多様な分野の専門知を融合し、幅広な視野を持って新たな価値創造を支える人材育成と研究の推進であり、持続的に地域を元気にするエンジンという地方大学に課せられた最も重要な課題に対応したチャレンジです。また、コンパクトな大学のメリットと資源を効果的に活かし、高度な教育研究を将来的にも維持発展させる上で有効な手段であると考えています。大学院生の確保という点について言えば、ポイントとなるのは先生方が楽しく前向きに研究をする姿を学生に見せることであると言われますが、全ての先生方そうしてそれを支援する事務職員の皆さんのおかげで、募集定員もほぼ100%を満たせる見通しも立ったようです。まだまだ新たなシステムでの運営や教育体制など、ご苦労をおかけすることも多いかと思いますが、どうかよろしくお願いいたします。
   同様に、工学部にあっても、本学の強みであるオプティクスと感性工学を横糸、従来の分野による専門知を縦糸にして、データサイエンスを含む幅広な工学的リテラシー教育の上に立った一学部一学科の体制がスタートできることになりました。本当にご苦労様でした。こうした大学院、工学部どちらの組織改革とも、個別分野の専門知を伸ばしつつも、多様な分野と融合するという第一番目のキーワードに対応した改革であり、社会の流れを睨んだ課題への先取りと考えています。
   また人生100年時代も念頭に置いた幅広な学び直し機能を高めるために宇大アカデミーを組織しましたが、一昨年に開講した宇大未来塾では "とちぎ志士プログラム"や"次世代経営マネージメントプログラム"で合計70名もの受講生を得て地域の次世代のリーダー養成を進めており、また、昨年の秋にスタートしたUUカレッジでは、多様な市民の体系的な学び直しが高く評価され、予想以上の53名もの受講者を迎えることができました。こうした宇大アカデミーは、学ぶ人間の多様化という二つ目のキーワードに対応した施策であると共に、従来の教育研究と合わせ、地域の持続的な発展という三つ目のキーワードに対応した施策です。
   さらに分野融合と地域の持続的な発展というキーワードに関しては、陽東キャンパスにロボティクス工農研究所の研究施設とガラス温室が稼働を始め、企業とも連携して研究成果の社会実装が進められていることも忘れてはいけません。
 
   また、キーワードには上げませんでしたが、より高い教育研究機能の維持と充実が大学にとっての最重要な課題であることは言うまでもありませんし、必要に応じて他大学との緊密な連携が求められています。これに関しては、栃木県における質の高い教員養成の拠点としての機能を将来にわたり維持・強化するため、全国に先駆けた共同教育学部の設置が群馬大学と連携して進んでいます。こうしたチャレンジは将来を見据えた施策として文部科学省からも高く評価され、この三月に申請、来年4月の設置に向けて作業が進んでいます。教育学部の教職員の皆さんにはファーストペンギンとしてのご苦労、本当に感謝しております。どうかよろしくお願いいたします。
 
   今年はこれまで進めてきた昨年までの組織改革を着実に実質化することが最も重要な課題になりますが、もう一つ、地域デザイン科学部設置に始まる当面の大きな教育研究組織改革の締めくくりとして、修士課程に続き大学院博士課程の改革への準備がスタートします。一方で、運営組織については不十分なところも少なくなく、4月からは、教員と職員の協働を進め入試に対する戦略や広報と入試の実施を総括するアドミッションセンターを設置すると共に、IRをベースに大学の戦略や評価をリードする戦略企画室の設置などの新しい組織も整備する予定です。更に事務組織で言えば、縦割り的な狭い帰属意識を改めると共に、作業の平準化や効率的な運営を進め、働き方改革にも対応できような組織改革も検討していただいております。また、組織改革ではありませんが、国から求められている教員の厳密な業績評価による処遇への反映と新たな年俸制導入についても対応していきます。加えて、教育について言えば、全学必修の情報処理基礎を大幅に見直し、AIの技術進歩を活用できる人材を養成するためにデータサイエンス教育の内容を拡充するなど、社会の要請を見据えた教育内容の整備も早急に考える必要があります。
 
   以上、本学の進んでいる方向をかいつまんでお伝えしました。ご存知の通り今年は開学70周年に当たります。組織や施設の整備に加え、フランス式庭園や峰が丘講堂、石蔵を含むヒストリカルゾーンの整備も含め、宇都宮大学が90周年、100周年を迎えられる大学であるよう、将来を見据えた種を着実に播き、3C精神をモットーに、あらたな時代に対応した国立大学として、明るい未来に向かって産みの苦しみも味わっているところです。前のめりになってはいけませんが、小回りのききやすいコンパクトさを活かした特徴的な施策と皆さんのご協力とご努力のおかげで、各方面での本学の評価や存在感は高まってきました。どうか皆さんには、未来に向かって持続的な大学として変化していく本学に自信を持っていただきたいと思いますし、そこの構成員であることに誇りを持って頂きたいと思います。そうして、全ての構成員の方々が、それぞれのお立場や分野で、プロ意識を持ち、組織の壁を作らず、本学の目指す目標に向けてベクトルの向きを合わせながら力を発揮して頂きたいと、心の底からお願いする次第です。新年にあたり、学長として改めて気持ちを引き締め、みなさんと力を合わせ、社会から信頼されるより良い大学づくり、働き甲斐のある持続的な大学づくりに励んでいきますので、どうかよろしく願いいたします。結びに、今年が皆さんにとって、宇都宮大学にとって、そうしてあらゆる社会にとって、更に佳き年になりますことを願い、年頭のご挨拶と致します。
 
 
2019年1月 宇都宮大学長 石田朋靖

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