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平成24年度学位記授与式(3月25日) 式辞

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式  辞
 
  本日ここに学位を授与される皆さんをお迎えし,学位記授与式を挙行できますことを大変嬉しく思います。学士の学位記を授与される891名,修士の学位記を授与される373名,博士の学位記を授与される17名,計1,281名の皆さんが宇都宮大学を巣立っていかれます。この中には留学生86名が含まれています。また,3月15日には,宇都宮大学・東京農工大学・茨城大学の3大学で構成される東京農工大学大学院連合農学研究科・博士後期課程の学位記授与式が行われ,本学農学研究科の教員の指導を受けられた9名の方に博士の学位記が授与されました。宇都宮大学の教職員を代表してお祝い申し上げます。また、この日に至るまで皆さんを支え続けて下さったご家族の方々に心よりお祝い申し上げます。
 
  皆さんにとって,本日の学位記授与式は,人生の節目であり,新たな歩みのスタートになります。宇都宮大学を学びの場として選ばれた皆さんは,最も活力に満ちた人生の時期を本学で過ごされ、多くの試練を乗り越えられて,本日めでたく学位を取得されました。学位取得は皆さんの研鑽と努力の賜であります。同時に,皆さんを経済的・精神的に支えてこられたご家族,共に学んだ友達からの励まし,多くの教職員からの直接的・間接的な指導あるいは支援に対する感謝の念を忘れず、深く心に留め,これからの新しい人生を歩まれることを念願いたします。
 
  4年前の入学式において、私は次のことを皆さんに申し上げました。一つは、宇都宮大学は全国の国立大学に先駆けて英語教育の大改革を行いました。国際化を見据えて実践に役立つ生きた英語教育を立ち上げ、4年前に入学された皆さんはその第一期生であること、そして、すべての学生が英語によるコミュニケーションが可能になることをお約束しました。本学が進めた「浴びる英語」をテーマとした実践的な英語教育により、皆さんお一人お一人の英語力は飛躍的に向上しました。授業評価は5点満点で4.74点と極めて高く、また、入学後1年間の全学学生のTOEIC試験の平均得点が44点アップしたことがこのことの証となっています。本学の「浴びる英語教育」で培われた実力を基に、今後、広く国際社会でご活躍いただければ幸いです。
 
  他の一つは、実践を伴った行動的知性を身に付けることの大切さについてお話ししました。積極的に視野を広げ、専門以外への興味・関心、ボランティア活動への参加,多くの人との出会い・語らい・助け合いの大切さ、特に教養の大切さについてお話ししました。「人間の基盤を育成する教育方針」の下、本学で学ばれた皆さんには新たな社会で活躍するのに必要な教養と十分な基礎力・実践力、そして人間力が培われております。これからは「高度専門職業人」として社会に貢献され、さらに研鑽を積まれながらご活躍いただけるものと大いに期待しています。
 
  さて皆さん、現在の我が国は、少子高齢化・エネルギー・環境・食料問題など、多くの課題を抱えています。本学を巣立っていかれる皆さんには分野を問わず何事にも積極的に取り組み,信念と勇気、夢と希望を持って地域の,日本の,そして世界の中で活躍されることを,また、人類の未来に向けてより良い社会を築いていってほしいと願っています。
 
  21世紀を平和で持続可能な社会とするには,文化芸術と科学技術のバランス、文系と理系が共鳴し合いながら強く連携する新たな社会づくり、文理共鳴社会の形成が必要であります。文系と理系が互いに共鳴し、理解し合い、理系の科学技術の成果をどうやって人間社会の中で「正しく活かし、発展させていくか」については社会科学などの文系との強い連携が必要になります。
 
  歴史を振り返れば、20世紀は科学技術が急速に進歩した時代でした。キュリー夫妻が1トンのピッチブレンド鉱石の残滓(残りかす)から0.1グラムの放射性元素ラジウムの抽出に成功されたのは1902年、アルベルト・アインシュタインが質量とエネルギーの等価性に関する特殊相対性理論を発表されたのは1905年、以後、20世紀100年間における科学と技術は著しく進歩しました。
 
  人間は自然法則を科学的に解明し、その成果を基に技術開発を続け、生活に活用し,さらに技術を進化させ、その恩恵に浴してきました。このこと自体は正しく悪いことではありません。しかし、どこかに傲慢で度を超えた部分があるように感じます。自然の真の怖さを知らず、地球は自然界の循環・浄化作用の域を超えた状態にさらされ,知らず知らずの間に環境破壊が進んできました。「人間は,何事においても,度を超えることに慎重でなければならない」と思います。
 
  人間社会には科学技術の進歩だけでは対応しきれない面が多くあります。文化芸術・精神文化は人と人との繋がりに心の潤いをもたらしてくれます。私たちは自然界と人工物、精神文化と物質文明とがよく調和のとれた「バランス社会」の形成、「文系と理系が共鳴して強く連携する優しい社会づくり」の大切さを再認識する必要があると思います。
  共鳴し合える強い連携とは,考え方や見方が異なる異分野の人たちを受け入れることであり,言葉や習慣が異なる外国の人たちとの協力体制をつくることであり、異なる分野を組み合わせて新たな価値を創り出すイノベーションの世界です。
  イノベーションを推進するには,他を受け入れるスケールの大きな人間,広い心をもった人間であることが必要です。人と人との繋がり、共鳴し合える強い連携が必要になればなるほど、素直に心を開いて語ることが大切であり、そのためにも皆さんには自らの強い信念と哲学を持ちつつ、「寛容の精神」を大事にしてほしいと思います。寛容の精神は人間社会の複雑な問題を解決してくれるはずであります。
 
  皆さんの前途には輝かしい未来が開かれていることを確信しています。しかし,ときには悩み・迷い、辛抱しなければならないときもあるでしょう。18世紀から19世紀にかけて活躍されたドイツを代表する天才的文豪:ヨハン・ボルフガング・フォン・ゲーテは、その83年の全生涯をかけて完成したといわれる大作「ファウスト」の著書の中で,「人間は、努力をする限り、迷うものだ」と神様に言わせています。また、「善い人間は、よしんば暗い衝動に動かされても、正しい道を決して忘れてはいないものだ」とも言わせています。人は誰でも悩み・迷います。悩み・迷いは努力していることの証であり、人間を成長させてくれます。
 
  皆さんが悩み・迷い、行き詰まったとき、宇都宮大学という母校がいつも皆さんを見守っていることを忘れないで下さい。皆さんが,いろいろな問題に遭遇し,相談したいことがあれば,いつでも,母校の門を叩いてください。宇都宮大学は今まで以上に卒業生・修了生との繋がりを強くしたいと願っています。大学は一時期の学習機関ではなく,皆さんの生涯にわたる学習機関です。本学は,これまでの輝かしい伝統を礎に,皆さんの母校としてさらに誇れる大学へと一層努力して参る所存です。
 
  留学生の皆さん。 皆さんは異なる言語・文化・習慣の壁を克服されて,学部教育あるいは大学院教育を貫徹されました。これまでのご苦労とご努力に深く敬意を表します。日本で就職される方、母国に帰られる方、それぞれの立場においてご活躍されるわけですが、本学で身につけられた知識や技術・地域社会での活動経験を母国発展のために役立てて下さい。そして、母国と日本との友好の架け橋になっていただくようお願い致します。
 
  皆さんに一つお願いがあります。宇都宮大学は,卒業生・修了生を大学の大切な構成員として位置付けています。皆さんには各学部・研究科の同窓会に入会していただき、同窓会活動に参加され,宇都宮大学の現状についての情報を共有し、本学と深い絆で結ばれるようお願い致します。
 
  むすびに、今後、何事においても初心を忘れることなく、皆さんが大志を抱き,社会人として逞しく活躍されることを心から願い、また、幸運に恵まれ,健康で悔いのない人生を歩まれることをご祈念申し上げて,私の式辞といたします。
  本日は、誠におめでとうございます。
 
平成25年3月25日    国立大学法人 宇都宮大学長  進村 武男
 
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