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平成22年度入学式「学長式辞」

  本日,学部に入学された1,036名の皆さん,大学院に入学された463名の皆さん,ご入学おめでとうございます。 宇都宮大学の教職員一同を代表して,皆さんのご入学を心からお祝いし,歓迎いたします。また,これまで新入生を温かく見守り,支援してこられたご家族の皆様にお祝い申し上げます。
  宇都宮大学は,昭和24年に,当時の学芸学部と農学部の2学部から成る国立大学として発足しました。学芸学部は,その後,教育学部に名称変更になりましたが,明治6年の類似師範学校を源流としております。農学部は大正11年に設置された宇都宮高等農林学校がその母体になっています。昭和39年に工学部が,平成6年に国際学部が設置され,4学部からなる総合大学として発展し,今日に至っています。教育学部は137年の歴史を,農学部は88年,工学部は46年,国際学部は旧教養部時代を数えて42年の歴史をもっています。昭和24年の発足時から今日まで,52,095名の学部卒業生・大学院修了生を世に送り出しました。卒業生・修了生は社会の第一線で活躍しています。この輝かしい伝統を守るため,教職員一同は力を合わせて,皆さんが立派な社会人,教育者・技術者,研究者へと成長されるよう全力をあげて支援していく覚悟です。

  宇都宮大学は,「地域に学び,地域に返す,地域と大学の支え合い。」を地域連携の基本姿勢として,自ら築きあげた教育と研究の成果を社会に発信し,成果の還元に努めています。この努力が実り,平成18年に初めて調査された全国国公私立大学「地域貢献度」において,本学は全国総合第1位の栄誉に輝きました。以後,今日まで,毎年トップレベルに位置づけられており,今後もフロントランナーとして走り続けるため,一丸となって頑張っているところです。

  また,本学は,「豊かな発想を地域に,新たな知を世界へ。」をキャッチフレーズとして,高度な専門職業人の育成に努めるとともに,基礎研究と最先端研究を推進し,研究の成果を地域のみならず広く世界に発信しています。一例を挙げてみましょう。平成19年4月に,キヤノン株式会社との連携により,光(ひかり)に関する科学研究と技術開発を推進するオプティクス教育研究センターを設置し,昨年度完成した4階建ての新センタービルにおいて,学部及び大学院学生の教育と世界的な研究開発が進められています。総額5億円の各種の超高精度研究設備の設置,10年間にわたる大型プロジェクト研究が推進されており,日本一のみならず,世界の教育研究拠点として活動しているところです。そして,光(ひかり)技術の分野以外においても,第二の拠点,第三の拠点形成が動き出しており,大きく芽を吹き出そうとしています。

  学部に入学された皆さん。  大学教育は,教養と専門からなりたっています。教養教育は専門の基礎であると同時に,皆さん一人一人の世界観の形成,人間性の涵養,心の成長に大きな役割を果たします。生き方に対する指針を与えてくれます。高度な専門職業人に成長するためには,専門の知識や技術だけでは十分でなく,世界の文化を理解・尊重し,より良い人間関係,人と人との繋がりの大切さを感じ取れる人間に成長する必要があります。

  例えば,現在,大きな問題になっている「環境」について考えてみましょう。地球上の生物の「いのち」を支えていくには,地球規模での環境保全が必要です。この「いのち」の学問は総合学問であり,狭い分野にこだわっていては何もできません。学問領域の枠組みを超えた幅広い知識とその活用能力を養い,広い見識で客観的に物事を見るバランス感覚が必要になります。科学技術と文化芸術のバランス,自然とのバランスが重要であります。キュリー夫人がラジウムを発見してノーベル賞を受賞されたのは1903年。アインシュタインが特殊相対性理論を発表されたのは1905年。以来,20世紀の100年間は著しい科学技術の進歩の時代でした。2度の世界大戦が科学技術の進歩に拍車をかけ,世界経済は科学技術の進歩を基に展開され,現在もその延長線上にあります。人間は科学技術の進歩こそ正しい行為と考え,科学技術に焦点を当ててきました。その結果,地球は自然浄化の域を超えた状態にさらされ,環境破壊が進んでしまいました。人間は環境破壊を知りつつも重大事とは意識せず,20世紀の科学技術万能時代の偏った考え方と弊害を抱えたまま21世紀に滑り込み,すでに10年目を迎えています。人間は,何事においても,偏りすぎて度を超えることには慎重でなければならず,バランスのとれた感覚が是非とも必要であると思います。

  21世紀を「科学技術」と「文化芸術」のバランスのとれた世紀とするには,科学技術に文化的・芸術的な要素,すなわち,「人間の心」の取り込みが必要になります。人間中心の文化芸術の取り込みは社会に心の潤いを与えてくれます。哲学者カントが感激し,夜を徹して読んだといわれる教育書「エミール」を著した18世紀の思想家ジャン=ジャック・ルソーは,人間よ「自然へ帰れ」と唱えました。このスローガンは当時大流行し,文明が熟し,ただれきっていたときの「自然へ帰れ」の大合唱は,その後のフランス革命につながる精神的な支柱になっています。ルソーが亡くなって今年で232年。現在でもこの啓蒙思想家の訴えは,今なお生き続けていると思います。環境破壊が甚だしく,文明の繁栄におごりきって,持続可能な社会形成の重要性を忘れがちな現在であるからこそと思います。教養教育は,皆さん一人一人の世界観を形成する糸口を与えてくれるものであり,心の成長を支援してくれるものであり,ときには哲学的に物事を考えるきっかけを与えてくれます。青春時代に得た教養は一生の宝物であり,将来を強く支えてくれます。焦らず・あわてず・うろたえず,時間軸はゆっくりと流れていくことも念頭に入れて,真に大切なものは何か,足をしっかりと地につけて一歩一歩前進していってください。

  また,教室で講義を受け,熱心に勉学に励んでいただくことの大切さは言うまでもありませんが,入学後は,目標も考え方も異なる他学部の学生と交流する機会も多くあります。積極的に交流を深め,心を開いて話ができる良き友人をつくって下さい。スポーツや読書,旅行や音楽・美術,社会問題に関心と興味を持つように心掛けて下さい。そうすることによって,よりスケールの大きな人間に成長することができると思います。本学には,体育系や文化系サークルが100以上あります。課外活動に積極的に参加して,人との出会い・語らい・助け合い,互いの切磋琢磨によって,自己形成に励んでほしいと思います。宇都宮大学は,教育の一環として,教室外での活動を教室内での学習と同様に重視しています。
  リーマン・ショックに端を発する世界経済の急変の影響を受け,現在の就職状況には厳しいものがあります。3年後には回復していると信じていますが,就職は,教室内での勉学や就職活動のみの成果で決まるものではなく,大学生活をいかに過ごしたかが重要なポイントになります。サークル活動を通して多くの友人をつくり,他人を思いやり,理解することの大切さを学び,社会へ飛び立つ強い翼をつくっていただきたいと思います。

  大学院に入学された皆さん。  皆さんには,幅広い視野を持って多方面から物事を探求する姿勢を持ち続け,前人未踏の独創的な研究を目指し,研究の心,研究する精神を培ってほしいと思います。前人未踏の独創研究を着想する一つの方法は,狭い分野に閉じこもらず,専門の枠組みを超えた異分野との連携に着目し,新たな発想はないものかと日夜考え続けることでありましょう。思い切った異分野連携の推進が一つの解決策になると考えています。私は10年間余にわたり,産学官連携の仕事に携わってまいりました。その経験から,異分野連携の神髄は,「人と人との繋がりを大切にして,異分野を快く受け入れ,新たな考えを創り出す創造の世界」にあると考えています。そして,皆さんには,口先だけでなく,行動して「汗を流すことを厭わない人間」であってほしいと思います。

  留学生の皆さん。  宇都宮大学は,世界15カ国,42大学と国際交流協定を結んで積極的に活動しています。昨年度は340名の多くの留学生が本学に在籍して勉学に励みました。皆さんは,言葉や文化・習慣が異なる本学で勉学に励まれるわけですが,夢と希望を抱いて,一歩一歩前進していってください。宇都宮大学は,皆さんが必要とする支援は可能な限り行います。多くの友人,知人をつくり,本学で学んだ成果とともに,たくさんの良い思い出を作ってほしいと思います。

  最後に,本日ご臨席いただきましたご来賓の皆様を始め,ご家族の皆様には,新入生の成長を温かく見守っていただきたいと思います。宇都宮大学に入学された1,499名の新入生の皆さんの今後の成長と発展を期待して,私の式辞と致します。
 
 
                             平成22年4月8日    国立大学法人 宇都宮大学長  進村 武男

 

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