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平成21年度学位記授与式「学長式辞」

  本日ここに学位を授与された皆さんを迎え,学位記授与式を挙行できますことを,大変嬉しく思います。学士の学位記を授与される1,009名,修士の学位記を授与される361名,博士の学位記を授与される14名,計1,384名の皆さんが宇都宮大学を巣立っていかれます。この中には留学生が49名含まれております。さらに,3月15日には,宇都宮大学・東京農工大学・茨城大学で構成される東京農工大学大学院連合農学研究科博士課程の学位記授与式が行われ,本学農学研究科の教員の指導を受けられた12名に博士の学位記が授与されました。
  皆さん,宇都宮大学の職員を代表して心よりお祝い申し上げます。この日に至るまで皆さんを支えて下さった多くの方たち,とりわけご家族の方々に,心よりお祝いを申し上げます。
  皆さんにとって,本日の学位記授与式は,人生の節目であり,新たな歩みのスタートであります。大学及び大学院で得られた学生生活の成果をこれからの新たな社会で発揮され,日頃抱き続けてこられた夢を,ぜひ実現していって欲しいと思います。

  宇都宮大学を学びの場として選ばれた皆さんは,最も活力に満ちた人生の時期を,本学で過ごされ,多くの試練を乗り越えて,本日めでたく学位を取得されました。学位取得は,お一人お一人の研鑽と努力の賜ではありますが,皆さんを経済的・精神的に支えてこられたご家族あってのことであり,この日を心待ちにされたご家族に感謝しなければなりません。そして,共に学んだ友達からの励まし,多くの教職員からの直接的・間接的な指導あるいは支援に対する感謝の念も忘れず深く心に留め,新しい人生を歩まれることを念願いたします。

  さて,21世紀は持続可能な社会の実現のために,科学技術と文化芸術のバランスのとれた世紀でなければならないと思っています。20世紀は科学技術を著しく発展させた世紀でありました。キュリー夫人が放射性元素ラジウムを発見してノーベル賞を受賞されたのは1903年。26歳の若きアインシュタインが光量子仮説・ブラウン運動理論・特殊相対性理論の3大論文を発表されたのは1905年。以来,20世紀の100年間における科学技術の進歩には目を見張るものがありました。そして,2度にわたる世界大戦の勃発が科学技術の進歩に拍車をかけた世紀でもありました。世界経済はこの科学技術の進歩を基盤として展開され今日に至っており,現在もその延長線上にあります。
  人間は科学技術の進歩こそ正しい行為と考え,科学技術の発展に焦点を当てて努力してきた感があります。その結果,地球は自然浄化の域を超えた状態にさらされ,知らず知らずの間に環境破壊が進んできました。人間は環境破壊を知りつつも重大事とは意識せず,20世紀の科学技術万能時代の偏った考え方と弊害を反省しないまま21世紀に滑り込み,すでに10年目を迎えてしまいました。人は,何事においても,偏りすぎて度を超えることには慎重でなければならず,バランスのとれた感覚が是非とも必要であります。
  現在の環境問題,エネルギー・食料問題は非常に深刻化しつつあり,リーマン・ショックに端を発する世界不況の影響もいまだ解決せず,先行き不透明の感が強く,ピンチ状態にあります。しかし,ピンチはチャンスの裏返しとも言われます。歴史的にも,社会の構造的改革に伴って生まれる新時代は混乱期にスタートしています。私たちは先行き不透明感が漂うこの時期にあるからこそ,見直すべきものが他にないかと問うべきでありましょう。20世紀の科学技術万能の時代感覚から早く脱却することが,私たちに課された課題の一つではないでしょうか。21世紀を「科学技術」と「文化芸術」のバランスのとれた世紀とするには,科学技術に文化的・芸術的な要素を取り込む必要があります。人間中心の文化芸術の取り込みは社会に心の潤いを与えてくれるはずであります。

  私は,長い間,地域の産業界・行政・大学の三者の連携活動に携わってまいりました。産業界と行政・大学の結びつき,いわゆる産官学の三者の連携を成功させるには,人と人との繋がりを大切にすることから始まり,最後に人と人とのより良い関係が残り,このより良い関係こそが,次の大きな発展の礎になることを実感致しました。連携するということは,異なる分野を受け入れ,異分野を組み合わせ,新たな分野を創り出す創造の世界であり,智恵を出し合う世界であります。このためには,他を受け入れるスケールの大きな人間,広い心をもった人間であることが求められます。人を批判し責めるのではなく,協力し合って住みよい社会をつくっていこうではないかと呼びかけ,焦らず・慌てず・うろたえず,しっかりと足を地につけて,真に大切なこととは何かを問い直すことこそ,連携の神髄ではないかと思っています。
  「鉄の神様」,「鉄鋼の父」と称された東北帝国大学金属材料研究所の初代所長で,後に総長に就任された本多光太郎先生の色紙に,「角(カド)は破損の因となる。丸味をつけて破損を防げ。」という言葉があります。昭和19年(1944年)に書かれたものです。ご専門の金属材料において,角(カド)にストレス(応力)が集中して破損の原因になるとして書かれたものと推測しますが,私は,人間社会にも通ずるところがあると思っています。とげとげしい角(カド)のある人との関わりは破損を招く危険があります。丸味をつけて破損を防ぐ工夫も人間社会には必要ではないでしょうか。

  皆さんの前途には輝かしい未来が開かれていることを確信しております。しかし,ときには思い悩むこともあるでしょう。本気で辛抱しなければならないときもあるでしょう。ドイツの偉大な詩人ゲーテは,その著書ファウストの中で,「人間は努力するかぎり迷うものだ。」と言っています。悩み迷うこと,本気の辛抱は人間を成長させてくれることを忘れないでください。そして,宇都宮大学という母校がいつまでも皆さんを見守っていることも忘れないで下さい。皆さんが,いろいろな問題に遭遇し,相談したいことがあれば,いつでも,母校である宇都宮大学の門を叩いてください。宇都宮大学は,今まで以上に,卒業生との繋がりを強化したいと考えています。大学は一時期の学習機関だけでなく,生涯にわたる学習機関であります。宇都宮大学は,これまでの伝統を礎に,皆さんの母校としてさらに誇れる大学へと一層の努力をしていく所存です。
  49名の外国からの留学生の皆さん。 皆さんは異なる言語,文化,習慣の壁を克服され,学部あるいは大学院の教育を貫徹されました。これまでのご努力に深く敬意を表します。これからは本学で身につけられた知識や技術を母国発展のために大いに役立てて下さい。そして,母国と日本との友好の架け橋になっていただくよう,お願い致します。

  皆さんに一つお願いがあります。国立大学法人は,今や国に頼って運営する時代ではなくなりました。国からの運営費補助金はかっての国立大学時代の50%に落ち込み,大学自らの努力によって経営し,より良い大学へと進化しなければならない状況にあります。アメリカの州立大学は,卒業生を大学の重要な構成員の一部として位置付け,大学が卒業生とともに歩んできた長い歴史があります。卒業生の皆さんは,積極的に同窓会活動に参加され,宇都宮大学の現状についての情報を共有されるようお願い致します。4月29日には,卒業生のためのオープンキャンパスである「ホーム・カミングデー」が開催されます。皆さんも,元気なお姿を見せに来ていただけることを期待しています。
 
 
  最後に,次代を担う皆さんが大志を抱き,社会人として逞しく活躍されることを,また幸運に恵まれ,健康で悔いのない人生を送られることを祈念して,私の式辞といたします。
 
                        平成22年3月24日    国立大学法人 宇都宮大学長  進村 武男

 

 

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