お知らせ

平成29年度入学式(4月5日) 式辞

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  桜の花も微笑みはじめたこの佳き日、宇都宮大学は、総勢1382名の皆さんを、あらたにお迎えすることになりました。皆さん、ようこそ宇都宮大学にいらっしゃいました。宇都宮大学を代表し、お一人おひとりを、心から歓迎いたします。また、これまで温かく見守り、支えてこられたご家族ならびに関係の皆さま、本当におめでとうございます。

  宇都宮大学は、140年以上の歴史と伝統を持ち、そのルーツは明治から大正時代にかけて、栃木県に設置された二つの教育機関、すなわち、師範学校と宇都宮高等農林学校にあります。それぞれ、現在の教育学部と農学部の前身です。その後、地元からの強い要請を受けて53年前に工学部ができ、23年前には全国に先駆けて国際学部が設置されました。そして昨年には全国で初めての文理融合型の地域創生系学部として地域デザイン科学部が設置され、5学部からなる総合大学として新たな歴史を刻み始めています。現在は、皆さんを含め5千名の学生が学び、350名の教員と210名の事務職員が皆さんを支えています。こうした中、これまでに6万人近くの学生が本学を巣立っており、古くはコシヒカリのお米を育成した石墨慶一郎さんや日本で始めてパンダの飼育に成功した元上野動物園長の中川志郎さんを始め、現在のニトリ社長白井俊之さんも含め、多くの先輩が社会の第一線で活躍してきています。

  宇都宮大学では、伝統を受け継ぎ、更に良き学び舎として発展するために「宇大スピリッツ:3C精神」を大切にしています。それは、自らのビジョンに向かって「Challenge」=主体的に挑戦するC、「Change」=自らを変えるC、さらに「Contribution」=広く社会に貢献するということのCです。宇都宮大学では、この3C精神を大切に育て、地域に寄り添った教育研究の伝統を受け継ぎながら、学生と教職員が一体となって、さまざまな新しい試みに挑戦し、未来に向かって変化しています。
  昨年4月には地域デザイン科学部がスタートしたのに続き、今年4月からは国際学部が機能を強化して生まれ変わりました。また再来年の4月には全学の大学院を全面的に改組し、狭い専門分野だけではなく幅広な分野と連携した大学院教育を目指そうとしています。3年次に編入された皆さんが大学院に進学する頃には、一層魅力的な大学院に衣替えしているはずです。あらたな組織の改革だけではなく、各地の大学でモデルとなった「宇都宮大学基盤教育英語プログラム」、地域の強みを活かし世界レベルの教育研究を進める光工学、現場と最先端のバイオテクノロジーをつなぐ分子農学の教育研究、巨大企業や大規模大学を抑えてロボット大賞や発明大賞を受賞したイチゴ収穫ロボットや長距離輸送技術に関する工学・農学の連携研究、さまざまな教育・研究の分野で「宇大スピリッツ:3C精神」による成果が花開いています。
  こうした成果は、昨年末に発表された世界大学ランキングでは18000以上の大学中850位、つい先日発表された国内大学ランキングでは86国立大学中35位というように、医学・歯学・薬学系もない規模の小さな大学としては極めて高い評価をいただいています。本日から宇都宮大学の一員と成られた皆さんには、ぜひとも「宇大スピリッツ:3C精神」のDNAを受け継ぎ、自らの未来を切り拓く力を養って頂きたいと思います。
 
  さて、近年は人工知能の進歩が著しく、一年程前には囲碁のソフトが世界最強の棋士を倒したことが話題になりました。 また皆さんが働き盛りになる2045年頃には人工知能が人間の知能を超え、多くの人間の仕事をロボットが奪ってしまうと予想する研究者も少なくありません。そうした社会に生きていく皆さんは、宇都宮大学で何をどのように学んだらよいのでしょうか?
  一つめは、筋道を立てて物事を考え、それを相手と議論することです。
  論理を駆使した思考力と、それを相手と議論しながら磨き合うコミュニケーション力こそ、人工知能にはマネしにくい人間の優位点であり、どの時代であっても皆さんが社会の中で活躍する上で最も必要な能力なのです。これまでのように定まった知識の習得に追われ、偏差値に一喜一憂することから解き放たれて下さい。そうして、じっくりと批判的にさまざまな本や新聞を読む、何故そうなるのかという疑問を大切にして授業を受け教授と意見を交わす、年齢や立場の異なる人も含めて、さまざまな人たちと語り合い議論する、いろいろな手段によって人工知能にはマネできない能力を養って欲しいと思います。
  二つめは、専門以外のさまざまな学問に触れることです。
  それぞれの学問には、物事を明らかにする独特の考え方や手法があります。たとえば環境問題ひとつをとっても、自然科学、経済学、政治学、倫理学、哲学や文学、いろいろな学問分野で全く違ったアプローチをします。こうした幅広な考え方を身につけることは、狭い範囲内での論理からだけでは生み出されない、あらたな発想を生み出す源となるはずです。さらに、多面的な物の見方を知ることは、独断的な思考から抜け出て、人間としての「見識の高さ」にもつながるはずです。皆さんは1年生から基盤教育という括りで、さまざまな学問に触れることができます。
  三つめは、行動的知性の養成です。これは、本当の知は実践との表裏でなければならないという考えに立っています。現代社会が直面する問題を意識し、課題解決に向けて、さまざまな知を総合し行動につなげる能力を磨いておくなら、どんな社会で、いかなる職業についても、かならず皆さんは持てる力を発揮できるでしょう。そのため、私たちはアクティブラーニング形式の授業を重視して、知識と実践を主体的に融合する場面や機会をできるだけ多く用意しています。さらに4年生の卒業論文研究あるいは大学院の学位論文研究では、その集大成が行われます。これまでとは異なるスタイルで主体的に学修した皆さんが行動的知性をしっかり身につけて巣立っていかれることを願っています。
 
  以上、宇都宮大学で学ぶ上での三つのヒントをお伝えしましたが、大学時代の学びは、このような“知性”の習得だけではありません。もう一つ大切な学びは、多くの生身の人間と触れ合い、また、異文化の実体験などを通して、人間としての幅を広げることです。具体的に言いましょう。
  まずは、積極的にサークル活動やボランティア活動に参加し仲間や友だちをつくる、あるいはアルバイト先、国内外での旅先などで多くの人間と出会う、これも大切な学びなのです。さまざまな場面で人と触れ合い、親しい友人や仲間をつくり、スマートフォンの中での付き合いではなく、生身の人間と真正面から向き合い、共に笑い、汗や涙を流し、議論をすることによってこそ、相手の想いに共感でき、相手を尊重できる豊かな人間性、すなわち人工知能では真似のできない人間力を育むことができ、また自分がどんな人間かという立ち位置を確認できるのです。
  もう一つ、短期間でもいいから世界の各地を訪問する、これも大切な学びです。現代社会では,地域のどんな問題であっても世界の動きと密接に関係していますから、グローバルに活躍したい方はもちろん、地域の中で働く方も、広い国際的な視野をもっている必要があります。是非とも、学生時代に、出来合いの観光旅行ではないかたちで海外を訪問し、日本とは違う人の営みや生活の空気を肌で感じ、異文化を体験して欲しいと思います。宇都宮大学には皆さんを海外に派遣するいくつものプログラムが用意されていますし経済的に支援するシステムがあります。
 

  以上をまとめれば、学部であれ大学院であれ、大学では“知性”の習得という学びに加えて、人間としての幅を広げる学びも積極的に心がけて欲しいということです。そうした学びを心がけるなら、どんなに人工知能が発達しても、何も心配することはないはずです。

  さあ、これからがスタートです。皆さんは今どんな大きな夢を抱くことも許される新たな出発点に立っています。未来は誰かから与えられるものではなく、皆さん自身が創るものです。大きな夢、高い目標に向かって、宇大スピリッツ:3C精神を心に刻み、幅広く学び、心豊かな大学生活を楽しんで欲しいと思います。宇都宮大学で逞しく成長された皆さんと卒業あるいは修了を祝い合う日を楽しみに、私の式辞とさせていただきます。

平成29年4月5日   
国立大学法人宇都宮大学長
石田 朋靖
 
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