お知らせ

平成28年度学位記授与式(3月24日) 式辞

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   本日ここに、ご来賓ならびに関係者の皆様にご臨席いただき、平成29年度の学位記授与式を挙行し、有為な人材を社会に送り出すことができますのは、本学にとって大きな喜びです。ただいま学士979名、修士311名、博士15名、合計1305名の皆さんに学位記を授与いたしました。また、去る3月16日には、宇都宮大学・東京農工大学・茨城大学の3大学で構成される東京農工大学大学院連合農学研究科の学位記授与式が開かれ、本学教員の指導を受けた5名の方に博士の学位が授与されました。それぞれの学位を修め、宇都宮大学から巣立っていく全ての皆さん、そうして今日のこの日を心待ちにしてこられたご家族の皆様、宇都宮大学の教職員を代表して心よりお祝い申し上げます。本当におめでとうございます。
   また、卒業生・修了生には母国を離れ苦労しながら学んだ留学生の方が32名いらっしゃいますが、その中には、内戦状態にある母国シリアに帰ることもできず肉親からも離れ、多くの悲しみや苦労を乗り越えて学位を授与されたヌール-アルバセルバシさんもいらっしゃいます。ヌールさん、おめでとう。マブルーク!
 
   さて、皆さんに授与した「学位」、この言葉には、いったいどのような意味が込められていると思いますか?学位を「学」と「位」二つの観点から考える、これが私の持論です。
 

   先ず、「学位」の「位」からお話しします。「位」という言葉には品格という意味があります。皆さんには、生涯にわたって人間としての品格を強く意識した生き方をしてほしいと思いますが、学位を授与されるにあたり、特に、この言葉を噛みしめてほしいと考えています。なぜなら学位取得までには、熱心な指導教員やよき友人、そして何よりも皆さんを理解して下さったご家族など、多くの方々の支えがあったはずです。更に、皆さんを教育する費用の三分の二近くが税金で賄われていることを考えれば、国民からのご支援があってはじめて本日を迎えることができたのです。こうした全ての方々への感謝の気持ちを忘れないと同時に、多くの方々から支えられて得た学位であるという認識と強い責任感を持ち続けて欲しいと思います。そうした、一人よがりでなく、相手の思いや立場を尊重し感謝を忘れない生き方によってこそ、皆さんの品格も磨かれていくのです。ぜひとも、学位という言葉がもつ、一人の人間としての品格というものを強く意識し、生涯それを磨き続けて欲しいと思います。

   次に「学」についてお話ししたいと思います。「学」はもちろん「学ぶ」ということですが、では皆さんはいったい何を学んだのでしょうか。
   学士、修士、博士、それぞれで到達のレベルは異なりますが、広い教養に基づく学術的な素養や知識を修得した証明です。宇都宮大学は国立大学として、そうした意味での「学」の質は十分に保証しておりますので、自負を持っていただきたいと思います。
   一方で、皆さんが、大学で身につけた知識は、社会の中で直ぐに役立つことはめったにありません。むしろ、通用しないことの方が多いでしょう。また、仮に直ぐに社会で役立つ技能を習得していたとしても、それは直ぐに旧くなって使えなくなってしまうのです。しかし、安心してください。皆さんは、学位を取得する過程で、さまざまな局面で役立つもの、いつまでも旧くならない大切なものを学んだのです。なぜならば、皆さんが学んだ「学」とは、単なる知識や技能を指すのではなく、知識を基礎にして自分の頭で目の前の事実をつなぎ合わせ、新たな知識や智慧として組み上げるという一連の知的能力を指すからなのです。
   例えば学位論文を作成した時のことを思い出して下さい。現実の問題や先行研究に基づき、新たな課題を設定し、いかに難しい課題であったとしてもそれを解くために挑戦しつづけるチャレンジ精神、誰も知りえなかったような事実を把握・実証しようとする探求心と柔軟かつ論理的な思考、事実を客観的かつ体系的に整理し伝える経験、そして、結論に至った時に得られる、あきらめなければ困難は乗り越えられるという自信など、さまざまなものを身につけたのです。そうして、こうした知的能力の連鎖こそが「学」の本質なのです。皆さんが本学で身につけた知的能力は、社会に出た後、困難な課題を解決するための、一生の財産であると固く信じています。
 
   現在、少子高齢化や人口減少と地方の衰退、国家財政の悪化や経済的格差の拡大、グローバル化に伴う産業構造や就業構造の変質など、皆さんを取り巻く社会環境は厳しさを増しています。世界的に見ても経済の停滞や孤立主義、先ほどお話ししたシリアに代表される地域紛争の頻発など、解決が困難な課題が山積しています。皆さんは、これまでの延長線では対応できない不透明な時代、社会システムや産業構造が大きく変化する社会に飛び出していかなければなりません。そうした中で求められるのは、新しい変化に対応できる柔軟さとチャレンジ精神であり、あらたな変化を予想し、課題を発見し、解決する知的能力、すなわち「学」です。そして、その「学」を正しく役立たせる人としての品格、すなわち「位」です。皆さんが宇都宮大学で得た「学」と「位」を活かし、それぞれの職場で、あるいは生活の中で、自信とプライドを持って、さまざまな課題に取り組み、自らの人生を切り拓き、良き社会づくりに貢献して頂きたいと思います。
 
   ところで、本日は皆さんお一人おひとりにブルーのストールをお渡ししました。これには、皆さんに、ぜひとも心にとどめておいて欲しい「本学の熱い思い」が込められています。ストールをご覧ください。3本の線が描かれています。この3本の線は、本学が組織として大切にし、全ての学生・教職員にも大切にして欲しいと願う「宇大スピリッツ:3C精神」を象徴しています。「3C」とは、明るい未来を開拓するために主体的にChallenge・挑戦することの「C」、時代の変化に対応し自らをChange・変化させることの「C」、そして、広く社会にContribution・貢献することの「C」のことで、学生と教職員がこの「3C」を共有し、一体となって未来を開拓し、社会に貢献しようとする強い決意を表しています。

   宇都宮大学は、この3C精神に基づき、地域における知の拠点としての機能を強めるという構想のもとで、さまざまな挑戦を行っています。ご存知のように昨年の四月には、地域デザイン科学部がスタートし、今年の4月からは国際学部が機能を強化して生まれ変わります。また、再来年の4月には全学の大学院と工学部を改組し、これまでのような狭い分野にとらわれない幅広な教育を目指そうとしています。このような新学部設立や組織改革を含む宇都宮大学の構想は、文部科学省からも極めて高い評価をいただいていますが、まさに宇都宮大学が、どのように社会に貢献するかということに正面から向き合い、主体的に挑戦し、自らを変化させてきた結実、つまり本学の基本的な理念である「3C精神」の賜物なのです。

   ホンダの創業者である本田宗一郎さんはこんな内容のことをおっしゃっています。
   「チャレンジして失敗を怖れるよりも、何もしないことを怖れなさい。私の仕事で成功したものは、わずか1%にすぎない。99%は失敗の連続であった」と。
   どうか皆さんも、自分らしく満足できる良き人生を送るために、失敗を恐れずさまざまな挑戦をして頂きたいと願っています。しかし、挑戦すればするほど厳しい困難に直面することがあるかもしれません。また、新たな環境に飛び出さなければならず、不安を感じることもあるでしょう。そんな時には、ストールを眺めて「宇大スピリッツ:3C精神」を思い出し、失敗を恐れず、主体的に挑戦し、建設的な変化を求め続けていただきたいと思います。本学で学位を取得され、「品格」と「知的能力」を身につけた皆さんなら、必ず、乗り越えられると確信しています。 
   そうした中で、判断に迷い、思い悩み、誰かに相談したくなることもあるでしょう。違った切り口の学びが必要になることがあるかも知れません。そんな時には、いつでも宇都宮大学に戻ってきてください。指導教員をはじめ教職員一同、一緒に悩み、考え、みなさんを支援したいと思います。あるいは、チャレンジに成功し、祝杯を上げたいときには、ぜひ宇都宮大学に戻ってきてください。一緒にお祝いするとともに次なるチャレンジを後押ししたいと思います。宇都宮大学は皆さんにとって、いつでも戻ってくることができる母校、いつまでも信頼できる母校であり続けたいと思っています。
 
   そんな想いを込め、学位記授与式の式辞をこの言葉で結びたいと思います。
   元気にいってらっしゃい。良き人生を!
                                                                                                                                      平成29年3月24日 
国立大学法人宇都宮大学長
石田 朋靖
 
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