お知らせ

平成28年度入学式(4月6日) 式辞

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式            辞
 
   このたび宇都宮大学に入学された、学部学生946名、3年次編入学生50名、大学院学生400名、総勢1396名の皆さん、ようこそ宇都宮大学にいらっしゃいました。宇都宮大学を代表し、お一人おひとりを、心から歓迎いたします。また、これまで温かく見守り、支えてこられたご家族ならびに関係の皆さま、本当におめでとうございます。
 
   宇都宮大学は、140年以上の歴史と伝統を誇る国立大学で、そのルーツは明治から大正時代にかけて、栃木県に設置された二つの教育機関、すなわち、学校教員を養成するための師範学校と、農学や林学の高等教育機関として設置された宇都宮高等農林学校です。それぞれ、現在の教育学部と農学部の前身です。その後、地元からの強い要請を受けて昭和39年には工学部ができ、平成6年には国立大学初の国際学部が設置されました。そして今年度から全国で初めての文理融合型の地域創生系学部として地域デザイン科学部が新たに設置され、5学部からなる総合大学として新たな歴史を刻んでいくことになりました。この間、6万人近くの学生が本学を巣立って社会の第一線で活躍し、現在は、皆さんを含め5千名の学生が学び、350名の教員と210名の事務職員がこれを支えています。
 
   宇都宮大学では、全国でも数少ない、緑にあふれたキャンパスが、大学生活にゆとりと潤いをもたらしてくれています。例えば陽東キャンパスの内外では、今100本もの桜が咲き誇っています。また、峰キャンパスの正門を入って右手には、幾何学的に配置された緑や池が広がっています。この庭園は、今からおよそ90年前に、皆さんの先輩学生たちによって工事が行われたフランス式庭園で、その奥に見える洋風のお洒落な白い木造の建物は、大正時代に建てられた講堂です。このようにキャンパスには「宇都宮大学をより良き学び舎にする」という先人の思いが息づいています。
 
   先人の思いを受け継ぎ、宇都宮大学が、更に良き学び舎として発展するために大切にしているのが「宇大スピリッツ:3C精神」です。それは、自らのビジョンに向かって「Challenge」=主体的に挑戦するC、「Change」=自らを変えるC、さらに「Contribution」=広く社会に貢献するということのCです。宇都宮大学では、この3C精神を大切に育て、歴史と伝統を受け継ぎながら、学生と教職員が一体となって、さまざまな新しい試みに挑戦し、良き学び舎として未来に向かって変化しようとしています。
 
   こうした挑戦は、例えば本日から第1期生151名を迎えることができた、地域デザイン科学部の設置にも結びついています。宇都宮大学は、設立当初から、地域に寄り添って歩み、地域の知の拠点として教育と研究を通して幅広く地域社会に貢献してきました。こうした宇都宮大学で育まれてきた校風の延長の中で、新しい挑戦の一環として地域デザイン科学部が設置されたのです。挑戦の中身は、本日皆さんにお配りした宇都宮大学アクションプラン2016の冊子に詳しく書かれていますが、喜ばしいことに、ひと月程前、文部科学省から、全国の国立大学の改革構想の中で最も高い評価をいただきました。この他にも、各地の大学でモデルとなった「宇都宮大学基盤教育英語プログラム」、全国トップレベルの教員就職率を誇る教員養成力を更に高める教職大学院の設置、世界レベルの研究成果を活かした先端光工学を専攻する大学院の設置など、宇都宮大学をより良き学び舎にするため、次々と新たな挑戦を行ってきました。本日から宇都宮大学の一員と成られた皆さんには、ぜひとも「宇大スピリッツ:3C精神」のDNAを受け継ぎ、自らの未来を切り拓く力を養って頂きたいと思います。
   それでは、宇都宮大学で皆さんは何をどのように学んだらよいのでしょうか?
   一つめは、筋道を立て物事を論理的に考え、表現することです。1週間前の新聞記事に、人工知能によって東大合格をめざす「東ロボくん」というプロジェクトを率いている国立情報学研究所の新井紀子教授の話が載っていました。人工知能は計算や暗記はよくできるが、文章を理解し、論理的に思考し、表現する能力は、まだまだ非常に低い段階でしかありません。しかし試みに「東ロボくん」が受けたセンター模試や論述も含む東大模試の順位が予想外に高すぎたそうです。そこで、不審に思って調査をしたところ、人工知能の能力が上がったのではなく、中高生の言語能力や論理的思考力が、学業成績の上位から低位まで、どの層でも大幅に低下しているため、人工知能が相対的に高い順位をとったのだというのです。新井先生は以前に「コンピュータが仕事を奪う」という本を書いて話題になりましたが、言葉と論理を駆使した思考こそ、人工知能にはマネしにくい人間の優位点であり、どの時代であっても皆さんが社会の中で活躍する上で最も必要な能力なのです。是非とも大学時代には、じっくりと批判的に本や新聞を読む、何故そうなるのかという疑問を大切にして授業を受け教授と意見を交わす、さまざまな人たちと語り合い議論する、いろいろな手段によって人工知能にはマネできない能力を養って欲しいと思います。
   二つめは、専門以外のさまざまな学問に触れることです。それぞれの学問には、物事を明らかにする独特の考え方や手法があります。たとえば環境問題ひとつをとっても、自然科学、経済学、政治学、倫理学、いろいろな学問分野で全く違ったアプローチをします。多面的な物の見方を知ることは、独断的な思考から抜け出て、人間としての「見識の高さ」につながるはずです。皆さんは1年生から基盤教育という括りで、さまざまな学問に触れることができます。
   三つめは、行動的知性の養成です。これは、本当の知は実践を伴わなければならないという考えに立っています。課題解決に向けて、さまざまな知を総合し行動につなげる能力を磨いておくなら、どんな社会で、いかなる職業についても、かならず皆さんは持てる力を発揮できるでしょう。そのため、私たちはアクティブラーニングという形式の授業を重視して、知識を実践に融合する場面や機会をできるだけ多く用意しています。さらに4年生の卒業研究では、その集大成が行われます。高校時代とは異なるスタイルで学修した皆さんが行動的知性しっかり身につけて巣立っていかれることを願っています。
 
   以上、宇都宮大学で学ぶ上での三つのヒントをお伝えしましたが、大学での学びは、このような“知”の習得だけに留まりません。サークル活動やボランテイア活動に参加し、あるいはさまざまな場面で積極的に仲間や友だちをつくることも、同じように大切な学びです。スマートフォンの中での付き合いではなく、生身の人間と真正面から向き合い、共に汗や涙を流し、議論をすることによってこそ、相手の想いに共感でき、あるいは相手を尊重できる豊かな人間性を育むことができるのです。人工知能にはマネのできない、人間としての優しさや品格を養っていただきたいと思いますし、そうした皆さんを、教職員一同が最大限支援していきます。
 
   式辞の締めくくりとして、新入生の皆さんへのエールを送りたいと思います。それは大いなる夢と情熱を持てという内容です。
   90年程前に亡くなったフランス史上最高の女優と称されるサラ・ベルナールの言葉です。彼女は、「私の周りに素質に溢れた人は多い。しかし成功した人は多くない。何が違うのか。そこを乗り越えるには、何倍もの努力も必要だが、それに加えて大いなる夢と情熱が不可欠である。」という言葉を残しています。現在、私達が住む日本、私達が生きる世界や地球は、さまざまな意味で大きな渾沌の中にあり、先行きが不透明な状態にあります。しかし、だからこそ、皆さん一人ひとりが大いなる夢を持ち、そこに向かって、混沌の中で迷うことなく、情熱を持って人生を歩んで欲しいと思います。そして皆さんは今、どんな大きな夢を抱くことも許される新たな出発点に立っています。未来は誰かから与えられるものではなく、皆さん自身が創るものです。大きな夢、高い目標に向かって、宇大スピリッツ:3C精神を心に刻み、幅広く学び、楽しく心豊かな大学生活を送って下さい。宇都宮大学で逞しく成長された皆さんと卒業を祝いあう日を楽しみに、私の式辞とさせていただきます。
 

         平成28年4月6日

         国立大学法人宇都宮大学長

         石田 朋靖

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